世に出て間もなく、また採掘の継続が不安定であるパライバ・トルマリンを本書で取り上げた理由はただ一つ、その類いまれなる美しさのためです。ブラジルの北東の端に位置するパライバ州がパライバ・トルマリンのただ一つの産地で、ほかのトルマリンの鉱山からは離れています。この地のバタウラ村の丘で1989年の1年間本格的に産出しましたが、現在では残念ながらほとんど産出はありません。
パライバ・トルマリンは、従来のトルマリンには見られない非常に鮮やかなブルーまたはグリーンの色みを持っていて、この色は銅を多量に含んでいることにい起因しています。次ページの写真はトルコ石ブルーのパライバ・トルマリンで、ジェムクオリティです。多少薄手のカットでインクルージョンも見られますが、その色みは大変美しいものです。
私事で恐縮ですが、父の宝石を長い間見てきた母はパライバ・トルマリンを購入し、小粒の丸型を5個あしらったリングにしています。非常に魅力的な色のパライバ・トルマリンで、その色の美しさのためか、今もよく身につけているようです。宝石を比較的見慣れている人も欲しくなるほど、パライバ・トルマリンの魅力は他の宝石を凌駕しているのでしょう。ネオンのような青い輝きは個性的で、力強い美しさに満ちあふれています。
パライバ・トルマリンの明度は4前後で一定しており、淡めでも鮮やかさが出ています。明度の上下はもちろんありますが、同じ素材を厚めにカットした時と薄めにした時とでは明度に差が出ることを認識しておく必要があります。
パライバ鉱山からの報告によると、鉱山の深さは60メートル、縦坑と数キロに及ぶトンネルで、内部は迷宮のような状態だといいます。注意深く手探りをしながら鉱床を見つけていく困難な方法を今後も取り続けていくそうですが、成功を祈りたいものです。