原石とカット
ダイヤモンドの原石には、多種多様な形、色、品質があります。工業用ダイヤモンドは別にして、ここでは宝石用の原石を三つに大別して取り上げました。原石の善し悪しが、カットされたダイヤモンドの”美しい輝き”の決め手になっていることがわかります。カットの善し悪しは、同様の品質の原石から研磨された場合の優劣を左右しますが、もともと劣る原石に優れたカットを施しても“美しい輝き”は得られないことを知っておいてください。
ソーヤブル
ソーヤブルは二つのピラミッドを合わせたような正八面体の原石です。のこぎりで切ること(saw)ができる(able)という意味で、ロシア、ナミビアの鉱山から多く産出されます。ダイヤモンドのパウダーをつけた刃で切断して、通常大小2個のダイヤモンドに研磨します。ソーヤブルは全宝石用原石の10~20%しかありませんが、比較的研磨に障害が少なく、形が整っているため効率よく仕上げることができるので、大きさにかかわらず貴重なものといえます。
メイカブル
メイカブルは作ること(make)dができる(able)という意味で、形がまちまちなので、一つひとつの原石の形に対応して研磨されます。メイカブルは中級品の素材ですが、中には原石の形は悪くとも良質に磨き上がるものもあり、また一方では美しさに欠ける低品質のものも生まれます。現在、小粒のメイカブルは主にインドで研磨されています。
ニアー・ジェム
ニアー・ジェムは宝石用に近い本来工業用を意味する原石で、透明度に欠け、大きな炭素の黒点(カーボン)や亀裂の多いものがほとんどです。研磨されたダイヤモンドも透明度が低く、美しさは今ひとつで、低単位のジュエリーに使用されます。レーザーでダイヤモンドに穴を開けて黒点を取り除く処理や、表面に出ている亀裂に樹脂などを含浸させて亀裂を見えにくくする処理の有無に注意する必要があります。処理の有無により、価格が大きく異なるからです。
品質の見分け方
ダイヤモンドの品質は、美しい輝き、欠点の有無と程度、サイズの3つのポイントで判定します。
“美しい輝き”は素材の善し悪しとカットで決まります。美しく輝くダイヤモンドの絶対必要条件は、原石の透明度が高く、グレイみやブラウンみ、強い蛍光性、グレインライン(結晶成長する時に生じるねじれのような線)などがない素材であることです。このような素材に優れたカットが施されたものが、ビューティーグレードSの美しく輝くダイヤモンドです。ビューティーグレードBになると輝きが減少し、Dでは半透明に近く、美しさに欠けてしまいます。この美しい輝きの程度を見極めることが、見分けの第一のポイントです。
次に欠点は心地良さを損なう黒く見えるインクルージョン、耐久性に影響するクリーベイジの有無が決め手です。IFやVVSは別としてVS、SIクラスでは欠点であるかどうか、クラリティの種類で位置を確認して判断することが必要です。I1~I3は肉眼でキズが見え美しさに影響しているものです。
ラウンドブリリアントカットダイヤモンド一石では3ミリ(0.10ct)以下の輝きは弱く、6ミリ(0.70ct)を超えると存在感のある輝きが得られます。
希少性が高く価値の高いダイヤモンドとは、美しく輝く欠点のないより大きなものです。
選び方
受け継ぐ人に喜ばれるものを選ぶならば、ジェムクオリティのものをお勧めします。Gカラー、SI1以上が目安です。
アクセサリークオリティはダイヤモンドとしての美しさが十分ではないので、積極的には勧められません。ジェムクオリティ、ジュエリークオリティとの美しさの違いがわかった時から身につけなくなってしまうでしょう。
1カラットサイズのジュエリークオリティの価値は、石のみで、1個当たり8,000USドルが目安です。 (2004年現在)