メレー・ダイヤモンドとは小粒のダイヤモンドのことを指します。日本では0.2カラット未満のものをいい、通常のダイヤモンドとは区別して扱われています。メレー・ダイヤモンドは、数個まとめてデザインされるジュエリーに使われたり、他のカラーストーンを引き立たせる脇役であったりします。ちなみに、本所に掲載されている、ほとんどすべてのジュエリーにメレー・ダイヤモンドが使われていることからも、宝石を語る時に忘れてはならないものです。
第2次世界大戦以降、メレー・ダイヤモンドはベルギーのアントウェルペンやドイツのイーダーオーバーシュタインなどで研磨されていました。しかし戦後の復興とともに工賃が上がり、まずドイツのイーダーオーバーシュタインがメレー・ダイヤモンドの研磨地しての地位を失いました。一方、1960年代にインドの研磨が急速に力をつけてきました。工賃の安さ、優れたマネジメント、ジュエリーに対する伝統的な理解などの要因からその後も発展が続き、ピーク時には研磨工が100万人を超えるほどになり、現在でもメレー・ダイヤモンドの研磨工と生産個数は、インドが世界の90%以上を占めています。
次ページところで、世界のダイヤモンド原石の約70%を流通させているダイヤモンドシンジケートである、ロンドンのデ・ビアス社がインドに供給しているのは、形が不揃いで小粒なため研磨に時間がかかる原石です。形の良い粒揃いの原石は、タイのバンコクの研磨業者に供給しています。現在バンコクには約5000人の研磨工がいて、良質の原石に優れた研磨が施された次ページの写真のようなメレー・ダイヤモンドが生産されています。良質のジュエリー用の58面のフルカット、高級時計用のシングルカットのメレー・ダイヤモンドはバンコクで研磨されているものが多く、バンコクの研磨の質が高いことがうかがえます。
現在、メレーを数個使ったジュエリーのかなり良質なものでも20万~30万円で買うことができるのは、インドやタイの工賃の安さの恩恵を受けているからです。