産地によるインクルージョンの特色
宝石のプロは、エメラルドを一目見るとたいてい、産地をいい当てることができるものです。もし産地ごとに色みをはじめとした特徴がなかったならば、産地は学問としての研究の域を出なかったでしょう。しかし、特にジェムクオリティでは産地による特徴が明らかなため、価値、ひいては価格に大きな影響を及ぼします。そして多くの場合、産地特有のインクルージョン(内包物)が産地を判断する手だてとなり、時にはそれだけで天然であることの確証になりえます。ここでは、主要産地のインクルージョンを顕微鏡写真で見ていきましょう。
コロンビア産
コロンビア産のインクルージョンの特徴は、三相含有物です。写真に見られるように、液体、気体、立方体をした固体がエメラルドの中に内包されているものです。必ずしもすべてのコロンビアエメラルドに三相含有物が見られるわけではありませんが、特徴のある三相含有物はコロンビア産で、天然であることの証となります。インドのオールド・マイン(古い鉱山)のエメラルドといわれていた非常に品質の良いものも、三相含有物によって、じつは16世紀以降にスペイン人がコロンビアから持ち込んだエメラルドであると推定されています。
ザンビア産
コロンビア産を除くエメラルドには、黒雲母(バイオタイト)インクルージョンの内包が認められます。黒雲母の存在はザンビア産の証明にはなりませんが、ザンビア産に最も多いインクルージョンであるといえます。ザンビア国内のそれぞれの鉱山によって、種々の異なったインクルージョンが見られます。
ジンバブエ産
ジンバブエ産のインクルージョンの特長は、なんといっても写真に見られるトレモライトの繊維状の結晶です。針のように長く、交差していて、時には曲がっているものもあります。エメラルドが生成した時に周りの環境を取り込んで結晶した結果です。天然宝石が厳密には一つひとつ全部異なるのは、何億年も前の結晶生成時の環境に左右されているからです。それはなとも神秘的で、美しさを損なわない程度のインクルージョンは存在したほうがよいのかもしれません。
品質の見分け方
サンダワナ産エメラルドは、小粒で黄色みのグリーンが美しいことと、アクセサリークオリティを除いて一般的にオイルや樹脂含浸に左右されない素材の良さが特徴です。サンダワナ産エメラルドの元卸は、かつて、K、L、Mという品質表示をしていました。ちょうど、Kが本書のSとA、LがB、MがCとDの美しさにあてはまります。それに濃いもの、中くらいの明度のもの、淡いものを組み合わせて、数百~数千ピースが入った包みで取引されます。このK、L、Mという品質表示は、本書のビューティグレードという考え方の一つのヒントになっているものです。サンダワナ産エメラルドはほとんどが、ラウンドカット、スクエアカットに研磨され、一辺が3mm以下のものが多く見られます。ごくわずかにバゲットカット、マーキスカットが存在しますが、残念ながら一定量と品質をそろえて確保することは不可能なアイティムのため、手作りの1個しか作らないジュエリーの素材として活用されることがほとんどです。
価格はラウンドカットとスクエア、またはバゲットカットなどで若干の差があり、またジュエリーに使用するために、リカットをしてサイズを揃える時などは大幅に価格が割増になります。
選び方
サンダワナ産エメラルドは1個でしようすることはほとんどなく、数個が一つのジュエリーに使われるためよく色合わせされているものを選ぶことが大切です。色合わせ(カラーマッチング)はプロの仕事ですが、ビューティグレードと明度だけでなく、カットを揃えてあることも商品としては大切な要素です。このような諸条件を踏まえると、ジェムクオリティ、ジュエリークオリティのサンダワナエメラルドの使われているジュエリーは、通常格式が高く信用できる店でしか入手できないと考えてよいでしょう。
0.08カラットサイズのジュエリークオリティの価値は、石のみで、1個当たり160USドルが目安です。(2004年現在)