合成スター・コランダム
自然の創った宝石へのあこがれと、それと同じものを造って利益の恩恵にあずかろうという人間の欲望には、すさまじいものがあります。
合成ルビーが商業ベースで最初に作られたのは1904年ですが、人間がなぜ宝石と同じ組成の合成石を造れるのか、のみならずスターも出せるのだろうかと思う時、技術の力を感じます。スターの出方や、姿・形、色み、色の濃淡まで調整可能です。
しかしながら、設備があれば増産可能な合成石の供給は無限に近く、稀少性はありません。アクセサリーの部品として使われることはあっても、合成石は宝石ではありません。この合成スター・サファイヤと合成スター・ルビーの需要は、現在ほとんどないようです。
また、無色の天然コランダムの表面に、色とスターを付ける物質を科学的に薄く拡散(表面拡散処理)させブルーにしたものも作られています。最近では、タイ国の宝石研磨地・チャンタブリで、この表面拡散処理をされたブルー・スター・サファイヤが売られているそうです。これは前述の合成スター・サファイヤとは別物ですが、価格は安いもので、本物と混同されないような管理が必要です。
天然か合成かは、専門家であれば完全に見分けがつきます。現代の鑑別技術は飛躍的に向上しているため、光学的分析、成分分析、結晶成長の軌跡などによって確かめられるのです。
合成スター・サファイヤ
合成スター・ルビー(半透明)
合成スター・ルビー(不透明)
品質の見分け方
スター・ルビーと同じように、美しさと色の濃淡で見分けますが、特にブルーがはっきりしているかどうかが、品質の善し悪しの要です。
スターの出方については、ほかの条件が同一とすると、クオリティスケールの5Sのように縦軸方向に中心線が入るもののほうが、2Sのように横軸方向に入るものより良いと、カッターは考えています。縦に入っているものはより大きく美しく見えるので価値が高いのです。
選び方
ファセットカットの宝石は、色に関係なくその輝きが得られ、モザイク模様の美しさを楽しむことができます。しかしカボションカットで、色がグレイとなると、あまり美しさは伝わってきません。スターの出方を楽しめれば満足という方もおられるでしょうが、本来のジュエリーとしての価値は低いのです。第一に、小さくてもブルーのものをおすすめします。
第二に、普通の光でもスターの兆候があって、ペンライトなどを当てると、全面に明確で鋭いまっすぐな光の線が現れるものを選ぶことです。
またルースの場合は、カボションが高すぎるものや低すぎるものを避け、特に底の部分が深くないものを選ぶことです。
3カラットサイズのジュエリークオリティの価値は石のみで1個当たり3,000USドルが目安です。(2001年現在)