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宝石辞典
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結晶そのものが美しいルビーは非常に少ないのですが、古くからその需要を満たすために、結晶に熱を加えて黒みや青みを取り除き、美しさを引き出す処理が行われてきました。近年の加熱処理技術の進歩は、供給を飛躍的に増大させ、買いやすい価格を実現させました。しかし、ルビーの高温加熱処理(1600~1900℃)は耐久性を低下させ、商品の信頼性を損なうなどの問題を招いています。

ミャンマーでのルビーの産出は、歴史の長いモゴック地方からのものと、1980年代後半から開発されたモンスー鉱山からのものが代表的です。これらの原石はタイ国に持ち込まれ、加熱処理のうえ、研磨が行われています。しかしルビーには加熱されないものが存在します。本来美しく欠点の少ない宝石は処理をする必要がないからです。

次ページの写真のルビーは、モゴック産の無処理のルビーです。5.46カラットで、透明度が高く輝きのある逸品です。明度(tone)は6で、モザイク模様がバランス良く出ており、炎のような赤色を感じさせます。

0.1カラットに満たないような小粒のルビーは、明度が6になると、見た感じの明るさを失います。それは、モザイク模様の一つひとつが小さくなり、コントラストが弱くなるためと考えられます。小粒のものはルビーに限らず、淡めの色がジュエリーの素材として適しています。サイズによって最適明度が異なることを、プロは経験から感じています。また色の濃淡の評価は、時代、民族、使い方によって異なります。明度4のビューティグレードS~Aは、サイズの大小にかかわらず、美しさの点では優れているので、今後は人気が高まり、相対的に価値が上昇するかもしれません。

モゴック産の無処理のルビーは、通常インクルージョンが多いのですが、それが適度なものは、優しい美しさを与えてくれています。美しさと耐久性を損なわない限り、インクルージョンは許容されます。赤の濃淡のモザイク模様のバランスの良いことが、ビューティグレードS~Aの条件です。

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