無処理ルビーと加熱ルビー
モゴック産ルビーのクオリティスケールで、無処理のものと加熱処理のものを比較すると、透明度に差が見られ色と美しさが異なります。無処理のものは透明な赤で、すっきりしていますが、加熱処理されたものは多少透明度が低く、鮮明さに欠けます。結晶が高温の影響を受け、内部のインクルージョンや、表面に変化を及ぼした結果です。一つひとつの石を見て、無処理か加熱処理かを判定するのは難しいのですが、クオリティスケール全体で比較すると、かなりの差がわかります。研磨地には、いくつかの石を比べ、見た目で見分けられる業者がいるというのも理解できます。
また、顕微鏡でインクルージョンを調べると、無処理のものか加熱処理されたものかを、ほぼ確かめることができます。モゴック産の無処理のものには、写真のような60度に交わるシルク・インクルージョンが見えます。一方加熱処理されたものは、加熱により溶けた穴の痕跡が表面に認められるものがあります。さらに加熱の際、使用する薬品が亀裂にガラス状となって残る場合があります。
無処理か加熱処理かを明確にするいちばんの方法は、その宝石のルーツを明らかにすることです。どこで採れた原石を、誰から調達して、どのように研磨加工したのかの過程を把握することが、ますます必要となっています。それを裏付けるための科学的分析とデータの蓄積が、ルーツの明確化を補完します。
無処理モゴック産ルビー
モゴック産ルビーには、60度に交わるシルク・インクルージョンのほか、スタビィ(ずんぐりした)状の結晶インクルージョンが見られる場合があります。
加熱処理モゴック産ルビー
加熱処理コランダムはこの写真のようなスノーボール(雪ダルマ)インクルージョンが見られるものがあります。これ等は加熱処理によって溶けてボールのように丸くなった内包結晶です。
品質の見分け方
美しさの優れた、ビューティグレードのS、Aで、より多くの人々に好まれている、人気の高い明度(Tone)の5、6が、ジェムクオリティです。小粒石ではS、Aの4も、魅力のある品質です。ただし5に近い4と、3に近い4では、価値に大きな差があります。
古くからピジョンブラッド(鳩の血)がルビーの最高の色であるといわれてきました。どんな色なのかを現地の業者に尋ねると必ず私にとっては濃すぎると思う色を指します。明度6~7で美しさを発揮させるためには淡い部分がバランス良くモザイク模様に現われるサイズが必要です。ピジョンブラッドは0.5カラットサイズでなく2カラットを超える大粒石の高い品質を表すのです。
カンテラ
肉眼で見えるインクルージョンは、美しさを大きく損なわない限り、自然の証と考えて、許容したいものです。特にシルク・インクルージョンや、フィンガープリント・インクルージョン(指紋のような液体インクルージョンの一種)は、一つひとつの宝石に個性を与えてくれるものです。
選び方
落ち着いたルビーの雰囲気を味わい、飽きのこない楽しみ方を目ざすのなら、迷わずジェムクオリティをおすすめします。昔から、特別に高価なものは、原産地や加熱の有無を確認して、価値づけのベースとしてきました。数千~数万ドルのルビーにも、原産地や加熱の有無を表示して販売することが必要だと思います。より多くのお客様に無処理の宝石の美しさの理解が進み、その個性と価値が認識されていくでしょう。美しさと対費用効果を考え、購入するのならば、4のS、Aも狙い目です。
1カラットサイズのジュエリークオリティの価値は石のみで1個当たり4,000USドルが目安です。(2001年現在)