logo

宝石辞典
title

アンバー〈琥珀〉は、太古の樹木が分泌した樹液が地中に埋もれ、化石化した樹脂です。アンバーの語源はアラビア語で「香気を放つ物質」という意味ですが、ドイツ語では「燃える石」と呼ばれています。アンバーは熱すると香りを放ち、火をつけると燃える性質を持っているからです。また、こすると静電気を帯びて、軽いものを引きつけます。

紀元前3700年のアンバーのペンダント、ビーズ、ボタンがエストニアから、また、紀元前2600年の宝物がエジプトで発見されています。中世ヨーロッパではキリスト教のロザリオにも使われ、貴重なものでした。19世紀後半になるとバルト海沿岸に有力な採掘会社が現れ、産出の半分に当たる低品質の原石がワニス(塗料)の原料に廻される一方、高品質の原石が宝石用として、ヨーロッパの諸都市に供給されました。特にその40%を得たウィーンは、シガレットケースやパイプなど、アンバーの喫煙具製造の中心地となりました。現在はバルト海沿岸のポーランドに近い、ロシアのカリニングラードが採掘の中心で、約5000人が従事し、世界の90%以上の産出量を誇っています。

アンバーのジュエリーは落ち着きがあり、優しく温かみのあるのが特徴です。ダイヤモンドは指を当てるとひやりとしますが、アンバーの感触からはぬくもりが感じられます。また、アンバーのネックレスは、身に着けているのを忘れてしまうほど軽いものです。その美しさは、ボリューム感、各々のビーズの品質と形、濃淡のバランスなどによって異なりますが、右の写真のネックレスは、色合いの組み合わせと、特別につけられたファセットが、美しさをきわ立たせています。

アンバーは生成時は流動的樹脂なので、古生代の昆虫を生きたまま包み込んで化石化した、「虫入り琥珀」がしばしば発見されます。古生物学のみならず、遺伝子の研究者からも注目される神秘的なものです。

アンバーは使っているうちに、淡い黄色が濃くなったり、黄色が赤みを持ったりしますが、その程度は種類によって異なります。

next