非常に稀なのですが、ダイヤモンドにはピンク、オレンジ、イエロー(カナリヤ色)、グリーン、ブルー、パープルのものが存在します。これらのダイヤモンドには、通常目にする無色から淡い黄色、ブラウン、グレイを帯びていくものとは別に、独自の価格体系が存在します。特にブルーやピンクのものは、その稀少性のため非常に高価です。また一定の濃さ以上の色のあるダイヤモンドは「ファンシー」という言葉がつけられ、「ファンシーブルー」などと呼ばれます。右の写真のペアーシェイプ・ダイヤモンドは淡めですが、美しいファンシーブルーです。
ブラジルからの産出が始まるまでは、インドがほとんど唯一のダイヤモンド産地でした。透明度の高い無色のものが大部分でしたが、稀にファンシーブルー、ファンシーピンクが見つかっています。ワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館のブルーの"ホープ・ダイヤモンド"はインド産と考えられています。ブラジルの産出は1725年からですが、ピンクやブルーのほかにグリーンの産出もありました。
現在ファンシーブルー・ダイヤモンドは、南アフリカのプレミア鉱山からごくわずかに産出されるようです。
ファンシーブルー・ダイヤモンドの美しさのポイントは、淡めでもグレイみの少ないブルーです。下の写真のリングのファンシーブルーは、グレイみの少ない珍しいものです。色が濃くなるほどグレイみが強くなり、モザイク模様に映えるブルーが精彩を欠いてしまいます。しかし絶対的な産出量がごくわずかであるため、理想的なファンシーブルー・ダイヤモンドを求めるのは非常に難しいことです。これは稀少性が宝石の価値を決めている典型的な例といえます。ジュエリーの素材と考えるよりも、コレクター・ピース(宝石愛好家の石)と割り切って求めるダイヤモンドであり、おもにオークションなどで数十年、数百年前のものが還流されて受け継がれています。