一度その本当の美しさを認識したら忘れられないのが、カシミール産サファイヤです。1881年頃にヒマラヤの北西のカシミール地方でかなりの量のサファイヤが発見されましたが、正確な場所は長い間秘密にされていました。その後、鉱山はカシミールの首都スリナガルの南東へ13日を要する、標高13,200フィート(約4,023メートル)の傾斜20度の険しい場所だということがわかりました。最初は大量に採れたため、青色の水晶が紫水晶と思われ、非常に安く取引されたといわれています。価格の変動があった後、カシミールのマハラジャ(インドの王様)が興味を示し、採掘を許可制にしてしまいました。
カシミール産サファイヤの大部分は、全体あるいは一部分にミルキーなクラウドがかかっていて、そのシルクのような光沢が共通した特徴といわれています。研磨時に原石のこの部分を切り落とし、透明度の高い部分のみを研磨して宝石に仕上げていました。
カシミール産サファイヤの産出は現在ではごくわずかで、インドのジャイプールで研磨されています。1900年前後に作られたリングやブローチの中には、カシミール産を見つけることができます。またカシミール産サファイヤには直線的なカラーバンドがあり、それがカシミール産である決めてになっています。
カシミール産サファイヤの美しさは、右の写真に見られるようにコーンフラワー(矢車草)ブルーと呼ばれる、若干白みがかった優しい感じの、なんともいえない柔らかなブルーにあります。欧米ではこれを、ヴェルヴェティ・ブルーと表現します。
カシミール産サファイヤは産出量が少ないため、クオリティスケールを作ることができませんが、考え方はスリランカ産サファイヤと同様です。