第11回 アンカットダイヤモンドジュエリーコンテスト
今年は新型コロナウイルスにより社会生活に多大な影響があったにもかかわらず、108作品ものご応募をいただきました。また日程や進め方の度重なる変更をいたしましたが、皆様のご理解とご協力により無事にコンテストを開催できましたことを厚く御礼申し上げます。
今年度は正八面体のアンカットダイヤモンドをテーマ石とし、最優秀賞1作品、優秀賞2作品、プレス奨励賞2作品を選出しました。時節柄、一次審査及びプレス審査はオンライン形式で、最終審査は審査員が作品を手に取って行いました。審査員の皆様には「テーマ石の独自性(魅力)をより一層引き立てているか」、「創造性が高いか」、「着用性を考えてデザインされているか」「応募者が考えたデザインの意図が作品に反映され、活かされているか」、「雑誌やデジタルメディアで取り上げてみたいか」などの視点で厳正に審査をしていただきました。
今後もSUWAはアンカットダイヤモンドジュエリーコンテストを通して、大自然が生み出した美しいダイヤモンドの魅力を皆様にお伝えできるよう、さらなる発展を目指してまいります。
令和2年9月吉日
諏訪貿易株式会社
取締役社長 横川 道男
応募者のコメント (デザインの意図)
モチーフは電球です。電球で閃きを表し、その中にアンカットダイヤモンドを留めることで、その閃きで何事にも屈さずに挑む意志の強さを表現しています。これから困難に向かう人に向けて考案しました。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
完成品を見て、とても良いものができたと感じた。プラチナとゴールド部分のバランスも良く、特にイエローゴールドのソケット部分の作りがより電球感を出している。着用したときの全体のバランスも良い。
諏訪 恭一 氏
アンカットダイヤモンドを良く引き立てていると感じた。正八面体の形が電球のエッセンスとして上手く表現
されている。
長嶋 泰子 氏
過去にも多いモチーフと組合わせたアイデアのデザインですが、地金を電線のように見せるアイデアが新鮮に感じた。時代遅れになりつつある電球というモチーフも逆に面白い。仕上げのテクスチャーにもっと工夫があれば、より良かったと思う。
野澤 治仁 氏
デザインとデザインの意図がとても面白いと感じた。私は作る側の立場でもあるので、完成品を見るまで石はちゃんと留まるのかなど、多少の不安もあった。しかし実際にできた品を見て、非常にアンカットダイヤモンドが引き立っているし、着用するとさらにデザインの良さがわかる作品だと感じた。
松川 覚 氏
カットされた石ではない、アンカットダイヤモンドのナチュラルな優しい光が宿った雰囲気を、電球の形で上手く
表現している。また地金の3色使いがとても良く、アンカットダイヤモンドが上手く引き立てられている。
職人の方へインタビュー!
今回、新型コロナウィルスの影響で山脇ギャラリーでの表彰式・シンポジウム・展示会が中止となりましたので、サイト上にて制作秘話を公開させていただきます。
最優秀賞「閃き」
制作者 川島 昇 氏 (以下、川島)
コンテスト担当者 (以下、担当)
担当
「閃き」のデザイン画を最初見たときに感じた印象を教えてください。
川島
デザインのインパクトが強かった。家庭にある電球というより、理科の授業で使うような豆電球を連想した。地金の色が左右違うのもコードのプラスとマイナスがあるような感じに見えた。あとスタンダードなジュエリーとはちょっと違うな!という感じ。作っているうちに愛着がとても湧いた。
担当
制作時に気を付けた点、こだわったポイントは?
川島
今回、石が非常に透明度が高く綺麗だったので、ピンクゴールドの地金(石枠)が石に映り込み過ぎないように気を付けた。地金の反射角度を考えたりデザイン画に石穴はなかったが、あえて開けるなど工夫した。2点留めだと石動きや石取れの危険性もあるので、かなりしっかり留める必要があるが、地金の映り込みを減らすために強度に問題が出ないレベルで、かつ地金量は最小限に抑えて制作した。
担当
確かに地金が石に映り込みすぎると、石があまり目立たないですよね。石穴を開けるのは良い工夫だと感じます。また電球モチーフの箇所と、チョーカー部分(地金の線)が分離されていないデザインですし、着脱のたびに左右に開閉すると地金が変形したり、電球部分に何度も負荷がかかると石が動いたり外れる原因になりそうですよね。制作指示書にはネックレスを留める差し込み式の金具が描かれていますが、これをあえて無くしてシンプルにしたのも、やはり強度面の問題からですよね。デザイン画を見て、作るとなると大変だなと感じていました。
川島
そうだね。シンプルなほうが見栄えも良いっていうのもあるけど、片側は硬いピンクゴールド、もう片側はプラチナ950で、地金の種類がそもそも違う。バネ性が全然ないと変形するし、首の裏側部分をオープンタイプにしたほうがいいんじゃないか話し合ったと思うけど、やっぱり着脱の際に大きく左右に開閉する必要がないよう、この形状を選択した。それにピンクゴールドは硬いし、開閉の際にプラチナばかり動くとか、可動域が片寄るのは駄目だから、左右のしなり具合を同じにしないといけなかった。
担当
なるほど。オープンタイプだと着脱もしやすいですし、強度的な問題もクリアできそうですね。首から抜ける心配もない、ちょうど良い開き具合です。異なる貴金属のしなり具合を同じようにするために、プラチナには特別な処理を施したんですよね?
川島
そう。貴金属の強度と硬度を高める熱硬化処理っていうのを施した。
担当
ちょっと特殊な処理ですよね。すごく硬くなったプラチナを加工するのは、とても大変だったのでは?
川島
大変だった。これは力業だね。でも上手くいったから良かった。
担当
異なる3つの地金を使用したデザインでしたし、アンカットダイヤモンドをピンクゴールドで挟み込むように留めるのも技術的に凄いと感じました。石留の瞬間は、川島さんのような熟練の職人でもやっぱり緊張しますか?
川島
石の種類によってはやっぱり怖いよね。でも今回のダイヤは本当に綺麗だったから、不安なく留めれた。これだけ綺麗で不純物もないと、多少石に負荷をかけてもビクともしないんだよね。これが傷とか内包物が入った石だと火に入れた時に割れたりするけど。やっぱり経験上、良くない石は割れやすいし、曇ったりするね。
担当
そう言っていただけると嬉しいです。ロシア産の八面体原石ですが、ずば抜けて美しく高品質なものでして・・・。品質の善し悪しが、制作時にも影響を及ぼすんですね。では最後に、受賞者へのメッセージや、作り手という立場からのアドバイスなどありましたらお願いいたします。
川島
普段なかなか職人と接触する機会がないと思うけど、積極的に色々な人に関わったほうが吸収できることも沢山あるので良い。受賞者が業界の人なのか、デザイナーなのか、学生なのか詳しくはわからないけど、もし作ることに興味があれば電話か何かで質問してくれても良いし、現場にいるからこそできるアドバイスもあると思う。職人にも色々なタイプがいるから、学べることも多いと思う。
担当
電話で質問しても良いんですね!凄腕の職人さんと直接お話できる機会なんて滅多にないので、今回の「閃き」の制作秘話でしたり、その他にも聞いてみたいこと、制作について知りたいことがあれば、受賞者の方はぜひ弊社までお知らせください。
応募者のコメント (デザインの意図)
テーマ石をじっくり眺めていると、ルーヴル・ピラミッドが想起され、モチーフとした。日が沈んだ後、噴水池に大ピラミッドが映り込み、まるでダイヤモンドの原石のように美しい八面体に見える瞬間がある。自然が生み出したダイヤモンドの形と、人のデザインした建築の形が重なり合い、テーマ石の美しさを引き立たせるようデザインした。大ピラミッドが水に映る景色をバックキャッチ付きのピアスで表現し、小ピラミッドをモチーフにしたイヤーカフとセットに。ピアスとカフは同じ耳にも、左右の耳に分けても着けられ、着けこなしを楽しめる。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
もう少し全体のサイズ感を小さくしたり、ラインを細くすると更に良くなったと感じますが、正八面体ダイヤモンドの形からインスピレーションを得て、素直にこういうデザインが出てきたのが良かったと思います。またキャッチ部分と一体のデザインになっている点を高く評価しました。
諏訪 恭一 氏
ルーヴル・ピラミッドを思い起こさせるユニークなデザインだと思った。
長嶋 泰子 氏
制作指示書内に2案出しているので、そこは最後まで自分で考えて決めて欲しいと感じましたが、数ある耳飾り系の応募作品の中でも、左右気にせず使えるデザインなので良いと思いました。非常にシンプルですが、美しくまとめられており、気軽に身に着けやすいデザインだと思います。
野澤 治仁 氏
立体感があってとてもオシャレなデザインだと思いました。ただ、着用性を考えるとモチーフサイズも大きく身に着けづらいのではないかと感じますので、もう少し工夫があるとより良いものになったと思います。
松川 覚 氏
モダンなデザインでアンカットの八面体の形と一体感がある。テーマ石Bは淡いイエローとブルーグリーンのものだったが、石の色が地金に打ち消されているので、石枠部分など工夫しても良かったと思う。
職人の方へインタビュー!
今回、新型コロナウィルスの影響で山脇ギャラリーでの表彰式・シンポジウム・展示会が中止となりましたので、サイト上にて制作秘話を公開させていただきます。
優秀賞「黄昏時のパリ」
制作者 横山 達三 氏 (以下、横山)
コンテスト担当者 (以下、担当)
担当
「黄昏時のパリ」を見た時の第一印象を教えてください。
横山
キッチリとした三角形を作るのは、なかなか大変そうだなと思いました。石留めをどうしようかとか。
担当
確かにキッチリした三角形で、とても立体的なデザインですよね!石留めはアンカットだけでなく、1.5mmのメレダイヤもありますね。横山さんに制作中の画像を一部いただきましたので、こちらでご紹介させていただきます。
制作現場 (一部)
担当
この後もシングルカットダイヤモンドのメレを留めていただいたり、イヤーカフも制作していただきました。また最初、仕上げは鏡面でしたが、18金が光っていると、アンカットダイヤモンドが目立ちにくいということで、仕上げのテクスチャーはつや消しとしました。ピアスキャッチもデザイン画の筒型だとピアスピンが抜けやすかったので、パーツを変更させていただきました。横山さん、制作工程のお写真ありがとうございました。それでは最後に、受賞者へのメッセージ等ございましたらお願いいたします。
横山
ピラミッドと八面体原石の形がよくマッチしていて、とても良いデザインを考えられたなと思いました。
応募者のコメント (デザインの意図)
流れる砂の中からキラキラと姿を現わすダイヤモンド。これが、このダイヤモンドを見た時に浮かんだ映像です。人間が創造したモノは朽ち果て砂へと変わるが、ダイヤモンドは今も昔も姿を変える事なく輝き続ける。そんなダイヤモンドが長い年月を経て再び砂の中から現世に姿を現す様。自然の中から出てくる原石をイメージし、素である事(無加工)を引き立たせるため極力装飾を減らしたデザインにしました。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
アンカットダイヤモンドの自然性を意図したデザインで、必要以上に作りこまれていない地金部分がコンテンポラリーデザインと言える。アンカットダイヤモンドの特性を活かしたデザインだと思う。仕上げは細かく粗すよう書いていたが、もっと粗くても良いと感じた。また小豆チェーンではなくボックスチェーンにするなど、工夫しても良かったと感じます。
諏訪 恭一 氏
一目見て良いと思った。非常にレベルの高いデザインで、ネックレスだけでなくブローチにしても素敵だなと感じた。砂の中に輝く正八面体のダイヤモンドが新鮮に感じる。とても感動した。
長嶋 泰子 氏
砂という感じはあまりしなかったのだが、星の王子様の住む星の地平線のようなイメージが想起される。テーマ石も引き立つし、ボリュームとインパクトもありますが、モダンで身に着けやすいデザインに感じます。また全体はマットな仕上げですが、一部が鏡面になっており、表情に変化がある点も高評価です。
野澤 治仁 氏
このデザインをはじめて見た時は、特にアンカットダイヤモンドを使わず、研磨されたダイヤモンドのメレでも良かったのでは?(わざわざ原石にする必要性を感じない)と思ったのですが、完成品を見て「ああ、これは研磨されたメレダイヤでは表現できない作品だった」と感じました。アンカットダイヤモンドだからこそ完成する良さ、雰囲気があり、とても良いデザインだと思いました。
松川 覚 氏
シンプルなフォルムの中に散らしておいた石が原石感をよく表していると思う。砂の中に埋まっている雰囲気がとても美しく、全応募作品を最初に見ていた際に、「ああ、これだ」と思った。
職人の方へインタビュー!
今回、新型コロナウィルスの影響で山脇ギャラリーでの表彰式・シンポジウム・展示会が中止となりましたので、サイト上にて制作秘話を公開させていただきます。
優秀賞「素」
制作者 松川 覚 氏 (以下、松川)
コンテスト担当者 (以下、担当)
担当
松川さんには審査員としてもコンテストにご参加いただいていますが、作り手の立場として「素」を制作すると決まった時の第一印象はいかがでしたか?
松川
幅が広い板状のデザインだったので、これはなかなか(作るのは)大変だなと。それが第一印象でしたね。
担当
確かにボリュームもありますし、石の数も多いので大変そうですね。こだわった点はありますか?
松川
こだわった点というより、もう少しこだわりたかった点がありますね。表のデザイン画と裏の指示書に描かれている絵でちょっと雰囲気が違ったので、指示書よりも表のデザイン画に寄せて作ったほうが良かったかなと。ネックレスは指示書を見ると平らな板状だけど、デザイン画では丸みがあるので、もう少し膨らみ(曲線)が出るように作れば良かったなと思いました。あと石留めももっとランダムに配置して、応募者の意図である「素であること(無加工)」という雰囲気がもっと出せれば良かったなと、そこが反省点ですね。
担当
作っていく中で見えてくるものもありますよね。松川さんの職人としての情熱が伝わってきます。松川さんは制作工程の写真を撮ってくださいましたので、こちらで詳しくご紹介させていただきます。
制作現場
担当
制作中の様子がたくさん見れて参考になりました。松川さん有難うございました。それでは最後に受賞者の方へメッセージをお願いいたします。
松川
「素」は僕自身とても好きなデザイン。コンテンポラリーなデザインでとても良かったです。
担当
松川さん、色々と詳しく有難うございました!
昨年まで最終審査に残った作品の中からプレス奨励賞を選んでいただいていましたが、今年度はオンライン審査だったこともあり、プレス奨励賞審査員の皆様にも一次審査からご参加いただきました。全応募作品の中から選出された2作品と、審査員の皆様からいただいたコメントの一部をご紹介させていただきます。
※ こちらの作品は優秀賞も受賞されております。ダブル受賞おめでとうございます。応募者のコメントは割愛させていただきます。
審査員からのコメント
ややぶっきらぼうな造形ではありますが、砂の中に原石が埋まっているというアイデアが、結晶としてのアンカットダイヤモンドの魅力を引き出しています。アート作品のようでもあり、良い意味で60~70年代のジュエリーのよう。 チェーンではなく細めのリボンを通したりすれば、かなりモダンでエッジィな感じで着けられると思いました。また短めに着けても素敵だと思います。ファッション感度が高い人が好みそうなデザインで、クラシカルな雰囲気の応募作品が多かった中、モダンに楽しむことができるデザインとして目立っていました。
「素」というタイトルと、「砂の中からアンカットダイヤモンドが姿を現す」というコンセプトの妥当性が納得できました。出来上がった時の造形が美しく、ボディ部分のつや消しの金と、アンカットダイヤモンドの鋭角さとの対比や煌めきのバランスが良く、身に着けた時も首元で映えることが想像できました。
砂の中のダイヤモンドということですが、キンバーライト(母岩)に埋まった石が発掘されたようにも感じました。 70年代の雰囲気を感じるようなモダンなデザインだと思いますが、仕上がり次第で、現代でもモダンで美しいアートっぽいジュエリーとなるか、少し古臭さを感じてしまうものになるか・・・。そこのバランスが難しいと感じました。
アイデアもとても良く、非常に味わいがあります。モチーフ部分はつや消しのゴールドとのことですが、制作するならどの程度の粗しにするのかでイメージがとても変わりそうな気がしました。細かい粗しのようですが、かっちりした雰囲気になると砂と原石のイメージ(無加工感)からは離れてしまうと思うので、バランスの調整が難しいデザインだと感じました。
応募者のコメント (デザインの意図)
自然のままで美しいアンカットダイヤモンドは、未来にたくさんの可能性を秘めていることを想像させます。人間が日々忘れがちな、ありのままの美しさを私はアンカットダイヤモンドに重ね合わせました。一般的にダイヤモンドに施される様々なカットをデザインとして表現し、あえて無機質でクールな印象に仕上げることで、アンカットダイヤモンドの魅力をより引き立てました。このジュエリーを身に着けた方が、自分の真の美しさに気づき、たくさんの可能性にあふれていることを忘れずにいられますように。
審査員からのコメント
アンカットダイヤモンドとカットダイヤモンドの対比、という目的が明確かつストレートに伝わってくるので、デザインに強さを感じます。よくあるデザインではありますが、デザインの意図も良く、グラフィカルなデザインなのでファッション誌の撮影などでモデルに着けさせて使いたい、若々しいペンダントだと思いました。チェーンが違和感なくデザインに溶け込むようなカンの工夫があれば、もっと良かったです。
アンカットダイヤモンドと、代表的な研磨済みダイヤモンドのカットをモチーフにした地金の組み合わせが面白いと思いました。ボリュームもあり、胸元でとても目を引くデザイン。ただ、地金部分のデザインが目立ちすぎて、もし制作するとすれば、仕上がりによっては主役のアンカットダイヤモンドが目立たない可能性もあると感じました。アンカットダイヤモンドが周りのモチーフに負けず、際立って見えれば、とても可愛い作品だなと思いました。
主役のアンカットダイヤモンドと、カットダイヤモンドの比較というのは面白い視点ですし、デザインの意図もコンテストの意義にも合うものだと思います。身に着け時にアンカットダイヤモンドの美しさが際立つかという点で、周囲のデザインに埋もれてしまわないかという心配はありますが、デザインがとても美しいと思いました。
第11回アンカットダイヤモンドジュエリーコンテストには新型コロナウイルスの影響がある中、108点ものご応募をいただきました。審査の結果、最優秀賞1作品、優秀賞2作品、プレス奨励賞2作品が選ばれました。応募者は学生の方、ジュエリーが好きな方、プロのデザイナーの方やクラフトマンの方など、幅広い層の方々がいらっしゃり、素晴らしいアイデアとクリエイティブなデザインが多く、とても見ごたえのある作品が集まったと感じました。
このコンテストは最終的に応募者のデザイン画をもとに職人が作品に仕立てるというスタイルですので、テーマ石が引き立つデザインであるかと同時に、実際に作るとどうなるかが考えられてデザインされているかを、制作指示書を通して確認しました。 ジュエリーは身に着けるものなので、自分で制作することがないとしても、着用可能なデザインなのか、構造上壊れやすくないか、重すぎないかなどを熟考してデザインすると完成度の高い作品が生まれると考えます。 構想を細部まで練ることは難しいことだと思いますが、年々応募してくださる皆様のレベルも上がっていることを実感しています。 今後の更なる発展に期待しております。
コンテスト実行委員会
審査員の皆様からコンテストの感想をいただきました。
菅原 晴子 氏
今回の審査はコロナの影響があったのでオンラインで行いましたが、これまで以上にじっくり時間も取れ、デザインの意図や実際にちゃんと制作可能なデザインかかなり厳しく見れました。例えば学生の方は休講中で、先生からアドバイスを貰えるような環境ではなかったと思いますが、大きく問題のあるようなデザインは見られず、応募作品は考えていた以上に良いものが集まったと思いました。
諏訪 恭一 氏
今回、この様な社会情勢の中で応募作品が100点以上も集まったのは、本当に凄いことだなと感じた。当初はコロナの影響で、もうコンテストを開催できないと思っていたが、ビデオ会議などを活用して無事に開催できたので良かった。審査専用サイトがあったので、全ての応募作品をいつも以上にじっくり見て選ぶことができた。今年度のテーマ石は大変希少な正八面体のダイヤモンドで、これだけ均整の取れた透明度の高い、美しい肌合いのものを、皆さんが考えたジュエリーに仕立てるということは、とても凄いことだと思った。
長嶋 泰子 氏
今年の審査はオンラインで行われたので、何度も見返えすなどして、かなりしっかり読み込みました。特にデザインの意図はいつも以上に目を通しました。他の審査員の方たちも同じようにじっくり読み込んでいたので、個別で審査していたにも関わらず、最終審査までには殆ど皆さんの意見がまとまっていたと思います。最終審査のWEB会議では、もっとしっかりディスカッションができれば更に良かったと思います。応募作品はレベルの高いものが集まり、とても良かったです。
野澤 治仁 氏
オンライン審査はなかなか慣れない作業ではありましたが、時間がしっかり取れたので、いつも以上に制作指示書を見ることができました。一日置いて再度見直すなど、じっくり考えることができました。指示書の内容はかなり細部まで考えて書き込んでいる方も多く、読んでいてとても楽しかったです。ただ、中にはデザインは綺麗ですが、実作するには厳しいものもあったので、ちゃんと石は留まるのかや、強度に問題がないか、着用した際に問題ないかなど考えてデザインすることが大切です。
松川 覚 氏
オンラインでの審査だったので、かなり時間が取れて何回も何回も見直すことができた。ただ、手書きで応募されている方も中にはいますし、その場合は画面上ではなく生のデザイン画だからこそ伝わってくるものもあると思うので、実物が見られればもっと良かった。
プレス奨励賞審査員
清水井 朋子 氏
コロナ渦の中でのコンテスト開催となり、在宅期間中にじっくりと考えて応募された方が多かったためか、例年よりアンカットダイヤモンドの特性を生かした作品やユニークなコンセプトの作品が多かったように思いました。課題石も、カラーダイヤモンドあり小粒ありで、アンカットダイヤモンドの楽しみ方、デザインの可能性の広がりを感じました。イヤーカフや片耳ピアス、左右でデザインの異なるピアスなど、耳周りのアイテムに面白いデザインが多かったのですが、結果として選出された2作品が両方ともネックレスになってしまったのは、少し残念でした。
本間 恵子 氏
新しいアイテムとして注目されている「イヤーカフ」が多く見られた。これまでにない新しい造形をデザインしようという意気込みの表れと思われる。また何かのモチーフを使った具象のデザインがこれまでより減った。モチーフに頼らないで主題を表現できるデザイン力がついてきているのだと思う。審査はWEBでデザイン画をじっくり見ることができたので、より熟考することができた。これはコロナ対策として始まった新しい審査方法がうまく働いた点だった。
源川 暢子 氏
今年はコロナ渦の中、応募者の方も不安が多い中でデザインを考えるのも大変だったと思います。そんな中で、これだけのクオリティの作品が応募されたということは、やはりアンカットダイヤモンドの素材としての魅力が大きかったからでしょう。正統派のアンカットダイヤモンドを含め、石の色や数でもデザインに変化が出せる素材がテーマでしたが、皆さん前回までのコンテスト結果をよく研究していらっしゃるなぁという印象でした。皆が不安を抱える状況の中で、夢や希望、元気をもらえるジュエリーデザインをたくさん拝見することができたことは、とても嬉しかったです。
宮坂 敦子 氏
まず、今回のお題石のセレクトが良いと思いました。アンカットダイヤモンドの正統派とも言える正八面体の結晶のサイズ違いの3種、これをどうデザインして分けるのか、これは応募するデザイナーさんにとっても腕の振るい甲斐があると思いました。応募作品全体を見ると、学生さんが少なかったということもあるのかもしれませんが、破天荒なものが少なく、総じてジュエリーとしてある程度のラインをクリアしている印象を受けました。ただ、もっともっと「アンカットらしさ」、アンカットだからこそ生きるデザインを今後も楽しみに期待したいと思います。初めてのオンライン審査でしたが、じっくり作品を選べて快適でした。とにもかくにも、こうした未曾有の時局の中、恒例のコンテストが無事に行えたということは、ジュエリーに携わる人たちにとっての大きな勇気になったと思います。
渡辺 郁子 氏
今回のコンテストは昨年よりも内容が濃いと感じました。プロの方の参加も多かったと後で知りましたが、プロの方もアンカットダイヤモンドに興味を持つ方が増えたのだと思います。また小さなアンカットを用いるテーマ石Cは新鮮でした。個性がありつつも、装着感の質を追求した着用できるものが選ばれ、かつての「ダイヤモンドであれば何でも良い」という時代とは違い、見る目が高まり、現代の成熟した日本社会を改めて実感しました。審査は他の審査員の方の顔を見ないで、それぞれ個別に行うので、むしろ公平性が保たれるとも思いました。年々、デザインのレベルがアップしているので、次回も楽しみです。