第 15 回 アンカットダイヤモンドジュエリーコンテスト
15 回目となる今年度のコンテストは 211 作品のご応募をいただきました。ご応募いただいた皆様、また審査員の皆様、各関係機関の方々のご協力により、無事にコンテストを開催できましたことを厚く御礼申し上げます。
今年も 3 種類の魅力的なアンカットダイヤモンドがテーマ石でした。国内外の学生の方からジュエリーが好きな方、多種多様な業界でデザインや商品開発をされている方など、幅広い層の方々が応募してくださり、とてもレベルの高い見ごたえのある作品が集まったと感じました。
そして、その中から最優秀賞 1 作品、優秀賞 2 作品、プレス奨励賞 1 作品、佳作 6 作品を選出しました。今年の審査は例年通り 1 次と 2 次審査をオンライン上でおこないましたが、3 次審査は 5 年ぶりに審査員が集まり対面でおこなうことができました。2 次通過作品を議論を交わしながら時間をかけてしっかりとチェックし、実作する 3 点を決めました。最終審査は約 1 か月かけて製作した作品を実際に手に取っておこないました。
審査員の皆様には「提案力」、「実現化」、「話題性」、「革新性」などの項目で細かく採点していただき、公平公正に審査されました。今年度の特徴としましては国内の受賞者が半分、国外の受賞者が半分という結果となり、日本だけでなく海外の方の注目度も高まっていると感じます。
今後も SUWA はアンカットダイヤモンドジュエリーコンテストを通して、大自然が生み出した美しいダイヤモンドの魅力を皆様にお伝えできるよう、さらなる発展を目指してまいります。
令和 6 年 9 月吉日
諏訪貿易株式会社
取締役社長 横川 道男
応募者のコメント (デザインの意図)
この指輪は、基本的な幾何学的な四角形をデザインの主体とし、シンプルでモダンな美しさを表現しています。デザインにはシンプルな線での分割が巧妙に用いられ、高低差のあるディテールが低調でありながらも豊かな層次感を与えています。カジュアルなセッティングにより、宝石が過度に覆われることなく、指綸全体がシンプルでエレガントに見えるだけでなく、メインの宝石の輝きを引き立たせます。精巧なデザインと細部の処理によって、この指輪は宝石の元々の美しさを保ちつつ、現代的なデザイン要素を取り入れ、品格とファッションの完璧な融合を実現しています。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
幾何形体のアンカットダイヤの美しさをリング全体に生かしたデザインは、現代的でインパクトがあります。また、挟み込む留め方により石が浮いているように見え、アンカットダイヤが効果的に使われています。シャープなデザインは魅力的ですが、実際に着用するには鋭い感じがするので、面の稜線をほんの少しだけ取ると変わるでしょう。また、全面鏡面仕上げは強すぎると思いますが、全面サンドブラスト仕上げは、印象がぼやけてしまいます。ダイヤを挟んで留めてある面を鏡面仕上げにすると、映り込みがあって面白いのではないかと感じました。
長嶋 泰子 氏
最初にデザイン画を見た時から、とても美しい作品だと思いました。幾何学的で淡々としたデザインは、小さな建造物のようにそこに存在しているという様子。しかし、実用性に乏しく、実作するかどうかについては最後まで悩むところでした。
完成品は、思いのほか指馴染みもよく、実用品というよりもコンテスト作品としてふさわしい、風格のある作品に仕上がったかと思います。
その危うさが、この作品の魅力でもあると思いますが、デザインの良さを壊さずに、実用性を高める工夫を盛り込むと、さらに一歩抜けるでしょう。
野澤 治仁 氏
このリングはテ―マ石の特徴を活かした洗礼された作品です。折りの稜線を活かしたデザインは和の空間を創り雅な作品になっている。また、幾何学的な四角形で構成された指輪は造形物としての評価を得ていますが、実際使用すると指輪としてはいくつかの問題があるのではと意見も出ました。しかしそれらも含め高評価を得た作品です。
吉田 由子 氏
端正なソーヤブルのためのデザイン。幾何学的でシャープな形状でありながら、不思議と優美でたおやかな印象の一品です。心配だった着け心地については、左右の指に触れる面がほんの少し、滑らかにそり返っているために、問題を感じませんでした。ただ、上の面の角、下の角については、デザイン上かなり鋭利で、日常使いには向かないと思います。また、透明度の高いソーヤブルであるが故に、実作ではK18の映り込みが気になりました。
松川 覚 氏
折り紙を思わせるような三角形の折り目の繋がり、アンカットダイヤの八面体をそのまま上手に展開したかのような面を上手くリングにまとめている。
テーマ石とリングの織りなす面のバランスを考え全体のサイズとリングサイズを指定するなど細部に気を使いデザイナーの意図をよく具現化している。
この賞に相応しい作品になっていると思います。
職人の方からメッセージ
最優秀賞【雅影】
制作者 松川 覚 氏
ジュエリークリエイター マンモス主宰
最初の着目点が素晴らしい。僕は仕事として長くやってるので、リングの基は“輪”みたいな感じだからこのようなエッジの出たデザインは思いつかない。
製作にあたっては3次元モデリングソフト使い、そのままでは造形機での出力が難しかったのと指への着け心地を考え地金の厚みを増やさせてもらった。
石留は爪に当たる部分の地金の逃げが全く無い(叩く、曲げる、留めた後で仕上げる)ので枠をキッチリと石に合わして天地から挟み込みロウ付けで留めました。リングのデザインとしてのまとまりと面の使い方に拍手を送りたい。
制作現場
応募者のコメント (デザインの意図)
メビウスの輪は始まりも終わりもなく循環する性質があることから、「愛の無限と永遠」という意味が与えられています。このリングのデザインでは、飛んでいる蝶の要素を抽象化し、飛んでいる蝶の形を使用してデザインの曲線の変化を表現し、テーマB石の自然な形状と色で感情と気持に満ちたリングに仕上げました。どの角度から見ても美しいです。私が表現したいのは、ダイヤモンドであれ、蝶であれ、愛であれ、美しさは自然であり、永遠であるということです。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
不定形なアンカットダイヤを、素直にリングに取り入れているところに好感が持てます。この様なデザインは多くあると思いますが、アンカットダイヤを爪止めではなく、リング本体で留めているところがスッキリとしたデザインの基でしょう。着用性もあり、多くの方に受け入れられるデザインですが、コンテストとしては、もう少し冒険があっても良いかと感じます。また、全面荒らし仕上げではなく、角線の側面だけ光沢仕上げにすると変化があって良いのかと感じました。
長嶋 泰子 氏
デザイン画、実作ともに良くできた作品です。優等生的な作品でネガティブ要素が特に見つからず、比較的スムーズに実作候補になりましたが、受賞に至らなかったのは残念です。
全体的に応募作品のクオリティが年々上がっているので、コンテストという性格上、インパクトがないと選ばれにくいですが、主張があれば良いという訳ではありません。ご自身が表現したかったことが、出来上がった作品にしっかり反映されているか、再度確認してみると良いでしょう。
野澤 治仁 氏
曲線でアンカットダイヤモンドを包み組むような石留。最小限の地金で石留することによりアンカットダイヤモンドの魅力を最大限に引き立たせるデザインになっています。
仕上げ方法を「マット仕上げ」とすることで「メビウス」のひねりをどのように作者がイメージしたかについて、審査員の感想や意見が多く聞かれ審査を盛り上げたことも付け加えておきます。
吉田 由子 氏
メビウスというテーマと、アンカットダイヤモンドの留め方が合致した作品でした。日常にも馴染むデザインですが、実作ではやや重さが気になりました。リングの幅に強弱があったり、仕上げもマット×ツヤなど、もうひと工夫があると、より良い一品となると思います。
松川 覚 氏
メビウスの輪、子供の頃に知り頭では理解しているけど表と裏、裏と表と永遠に途切れる事のない不思議な形。ダイヤモンドも長い年月をかけて生まれ人々に長く愛されているという思いを指輪で表したデザイン。
メビウスの輪が普遍的なデザインテーマで少しインパクトに欠けるが、テーマ石に上手く回り込みながらも余り石を覆い隠さずに何時でも着けていられそうな作品になった。お店に並ぶ様な通常の商品のデザインではなくコンテストだからもう一つ踏み込んで新しい発見や驚きが欲しかった。
職人の方からメッセージ
優秀賞【メビウス】
制作者 横山 達三 氏
銀座 OZU ジュエリー教室&ジュエリー工房
https://www.ozu-jewelry.com/
デザイン画を見て最初に思ったのはどう石留めするかでした。
アンカットダイヤは厚さや形が一定ではないので WAX で留める部分の形を作ってプラチナになってから挟み込んで留める方法を選択。
かたまりの WAX の状態でダイヤを埋め込んでおいてデザイン画になるように削り出し、ダイヤをそっと外してからキャストに。
キャスト後は、あとからだと仕上げにくいダイヤ周辺部分の形の修正と仕上げを優先。
石留めはリングをよくナマしてからダイヤが入るようにヤットコでひろげてダイヤをセットし、リング両側から締め付けて石留め。この際、多少は動くのでタガネで軽く押さえて完了。
ヤットコの傷がつくので全体のバランスを見ながらヤスリを掛けてサンダーで仕上げ、最後はサンドブラストの細かいものを全体に当てて完成です。
石留めするのが大変なアンカットダイヤ、リングのツイストした綺麗なラインを壊さぬように石留めしてからヤスリがけ、仕上げ、という通常とは手順が逆の制作となりました。
制作現場
応募者のコメント (デザインの意図)
ダイヤモンドにはお守り、魔除けの効果があり、神秘的な輝きを見ているとパワーがもらえる気がします。そこで精力が集まる星とダイヤモンドを組み合わせてデザインしようと思いました。流れる星と存在感が大きい石がなじむような動きのある形にしました。身に付ける人が力が湧いてくるような、その人を守ってくれるようなイメージでデザインしました。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
お守りというイメージでデザインされているように、華やかではないのですが、いつも身に着けていたいチャーミングなリングだと感じます。着用すると、手の甲にリングの腕部分は見えず、指の間にダイヤと金の星が見えるところが魅力的です。この様なフリーサイズのリングの場合、リング腕部分の強度に心配な面がありますが、構造面でも良く考えられている素敵なデザインです。
長嶋 泰子 氏
デザイン画が少し暗くてはっきりせず、目に留まりにくい作品でした。デザイン画で応募する場合、作品数が多いと見落とされるので、これは、必ず改善すべきポイントです。
デザイン自体は可愛らしく、また作者の真摯な態度を感じました。石も活かせていたので、実作が楽しみでしたが、作者の思いが今一つ伝わってこなかったのがとても惜しい。
一方で、ほんの少しの改善(例えば、小さな星のサイズバランスや、地金の処理など)をすることで、作品の魅力がグッと引き出されると思うので、試行錯誤を続けて欲しいです。
野澤 治仁 氏
このリングの特徴は腕の一部を空間にし、指にはめた時アンカットダイヤモンドを左右にずらすことで違う印象を与えるところです。また使用する指により同様の効果をもたらすところも存在感を感じさせます。使用することでより楽しめる作品になっています。
吉田 由子 氏
テーマ石から受けたインスピレーションが、ピュアなデザインに落とし込まれています。横を覆い隠すことのない素直な留め方は、今回の入賞作品の中で1番、アンカットダイヤモンドを美しく見せていました。立体的に交わる腕のデザインも、流れ星を連想させ素敵でしたが、やや宝石に対して繊細なバランスのように感じたことと、星の位置がもう少しダイヤモンドに近づいた方が、まとまりが出たのではないかと思います。
松川 覚 氏
エナジーと題されたこの作品、魔除けを身につけるという発想から生まれたデザイン。世の中には色々な魔除けがあるが、最強の石ダイヤモンドもその一つであろう。人の手を加えていないアンカットこそ相応しい。
ダイヤモンドを身に付けた時に石の存在を際立たせる為にリングのセンター部分を無くす。テーマ石の淡いグリーンを表そうとPTとK18コンビネーションにする、対の所にもう一つのパワーアイテムの星を置くなどデザイナーの思いを感じることが出来る作品。
職人の方からメッセージ
優秀賞【Energy】
制作者 川島 昇 氏
ジュエリー工房 カワシマ
※ 工房ではジュエリー製作を学びたい方も歓迎しています。
TEL : 090-9312-5929
製作するにあたりデザイン画がボヤっとしているので構造がわかりにくく、コンテスト担当者と一緒に少々悩んだ。
デザイン画を手描きするなら、影をつけて立体的にわかるように描いたり、2 種類以上の地金を使うなら細部まで見やすいようにハッキリ色分けするか、文字でどこがプラチナでどこがゴールドかなど、しっかり指示する必要があると思う。
趣味ではなく、もしデザイナーやクリエイターとして活躍したいと考えるなら、外注することもあるし、ジュエリー製作に詳しくない一般のお客様からオーダーを受けることもあると思う。
お客様からオーダーを受けた場合、デザイン画を見せるシーンもある。
パッと見てわかるデザイン画でないと商売にならない。
絵や文章などの雰囲気からして、受賞者は学生さんや若い方だろうか。
もしデザインを学ばれているのなら、誰が見ても理解できるようなデザイン画を描く練習をすることも大切だと伝えたい。これからもぜひ頑張ってください。
制作現場
応募者のコメント (デザインの意図)
漂砂鉱床の大な起伏と積み重なる時間の流れの中にあって尚、その輝きは人の目を惹きつける。人類がダイヤモンドと歩んだ歴史の最初の1ページをイメージした。
審査員からのコメント
渡辺 郁子 氏
この「moment」が満場一致でプレス奨励賞に確定しましたのは、デザイン、コンセプトがわかりやすかったことも一つの理由です。アンカットダイヤモンドとプラチナのシェイプが見事に調和し、洗練されたリングが想像できるデザイン画です。
ジュエリーのデザインはミリ単位、それ以下でイメージが変わりますが、計算された作品だと思いました。
本間 恵子 氏
本作は一目見て「実用に耐える」「身につけて飽きない」デザインであると感じた。研磨してしまうには惜しいほどの魅力を秘めたアンカットダイヤモンドを、シンプルな造形でできるかぎり引き立てている。実作する場合は指示書よりも石が隠れてしまうそうだが、石の側面が見えるデザインなので、着用する人にとっては十分楽しめるだろう。人類がダイヤモンドと歩んだ歴史の始まりとは、こんなふうに地面からちょっとだけ顔を出した蛍光の強い原石だったかもしれないと、コンセプトを読んで遠つ国の大地に思いをはせた。
源川 暢子 氏
アンカットダイヤモンドを「挟む」形でデザインをしたリングは、研磨やカットを施した石にはない個性と、見る角度や光線のあたり方によって表情を変える神秘的な雰囲気を際立たせるものだと感じました。リングとしても、華奢でエレガントな印象がありました。他のテーマ石で同じようなスタイル(挟む)のリングがあり、そちらと悩んだデザインでもあります。
宮坂 敦子 氏
自然の証しである結晶痕が全表面に楽しめる、この石の特徴をとてもよく活かしたシンプルなデザインです。作者が意図した「漂砂鉱床からダイヤモンドがのぞいている」イメージもよく表現されていると思いました。青色の強い蛍光もこの石の大きな魅力ですが、このデザインならその光も十分に楽しめます。蛍光性をもつほかの宝石(ルビーやフローライト等々)を使って同じデザインで仕立て、重ね着けをして、ブラックライトを当てて両石の蛍光を楽しむ、、、なんていう石沼ならではの遊びも出来そう。いろいろ楽しみ方の想像が広がるリングです。
清水井 朋子 氏
アンカットダイヤモンドのプリミティブな存在感と無機質でソリッドな地金のコントラストが美しく、不定形で平べったいフォルムのアンカットダイヤモンドを生かして貴金属の板で挟む発想にも魅力を感じました。
ただし実際に制作するとなるとデザイン画通りには仕上がらないとの指摘があり、この作品を受賞作として選出して良いかどうかは審査員の間でかなり議論になりました。
今後はアイデアを実制作可能なデザインに練り上げるためのさらなる研鑽を期待します。
【輝夜姫を輝く】
テーマ石 A
ヨイ イクエイ さん
【光の塔】
テーマ石 A
吉原 真由弥 さん
【Native】
テーマ石 B
Chica Peng さん
【風紋】
テーマ石 B
猪股 学 さん
【Temple of Light】
テーマ石 C
Chia Wen Chang さん
【導】
テーマ石 C
星野 佳子 さん
菅原 晴子 氏
このコンテストは回を重ねるごとに、アンカットダイヤの見せ方や制作方法がよく考えられたデザインが応募されてきています。また今年の特徴はリングの応募が多く、優秀賞にも他のアイテムは選ばれなかったのが残念でした。またテーマ石C部門に優秀なデザインが多く見られました。
毎年思うのですが、制作段階でどの程度手を加えて良いのか、少し変えるともっと良くなると感じることがあります。今年の受賞作はデザイン画に忠実に作られており、制作者の技量を感じます。それゆえに、細部にまで応募者が指示するのはとても難しいとは思いますが、指示書の重要性を感じています。
長嶋 泰子 氏
今回の応募作品は、石の留め方に工夫を凝らした作品が多く、世界に一つしかないアンカットダイヤモンドを魅力的にジュエリーとして仕立てるために、応募者それぞれが試行錯誤した軌跡を大いに感じました。また、最終的に実作に至らなかった作品の中にも、可能性を感じるものが数多くありました。ぜひ今回応募した作品をもう一度見直して、ブラッシュアップしてみてください。さまざまな気づきとともに、デザインをすることがもっと楽しくなると思います。
野澤 治仁 氏
例年に増して完成度の高い作品が多く楽しく審査を行いました。
毎回、石を固定する部分の具体的な提案不足と描き方の不十分さが気になりましたが、今回は、説得力がある描き方がされ、作品意図が明確に表現された作品が多かったと思います。受賞作品以外にも評価できる作品が多くありましたがそのなかで、総合的にこの3作品が選ばれました。
吉田 由子 氏
アンカットダイヤモンドの留め方に工夫があるものが多く、見応えがありました。実作には不向きながらアイディアに夢を感じるものや、作品に対して具体的な試行錯誤を尽くしているものなど、応募者の方の熱量、レベルの高さを、昨年にも増して感じました。
松川 覚 氏
今回で15回目となったコンテスト。
応募作品の数も増え内容も良く、特に今年は平均点が上がったように感じました。
良くなった反面、驚きや新しい発見のある作品が少なかったように思いました。身に着ける装飾品だから体型が変わらなければ生活習慣の違いぐらいで、そこまで違いが出ないかもしれませんが、新しい人として、僕には思いつかないような突拍子もない発想のチャレンジングな作品を期待しています。
またコロナが五類になって、オンラインだけでなく顔を合わせての審査もあったのはとても良かった。
渡辺 郁子 氏
当コンテストは回を重ねるごとにレベルアップしており、今回はさらに競争が激化したように思えました。数多くの優秀な作品の中で目立つには、特にプレス審査部門では、独創性や、かつて見たことのない新しい発想が重要ですが、誰もが見てわかるデザイン、そして立体になった時のイメージが想像できるものが、まず目に留まり、審査対象になります。
本間 恵子 氏
商業ジュエリーをデザインする人の中には「企画書」を書いたことがある人がいるはずだ。ジュエリー作家であっても、自作を美術館で展示してもらうには、意図や目的、構想の背景を企画書に入念にしたためるものだ。このコンテストの応募用紙にある「デザインの意図」の部分は、字数が極めて短いものではあるが、企画書にも等しい意味がある。本コンテストの審査にあたっては、多くの作品が「デザインの意図」の記述が非常に短く、またあいまいだった。意図のない、漫然としたもの作りが人の心を揺さぶるだろうか。ユニークな作品がいくつもあった中で、この点だけが唯一の不満である。
源川 暢子 氏
毎年思うことですが、本当に年々応募者のレベルが上がっていることは素晴らしいです。受け継がれていくジュエリーの魅力と、自然のままの美しさを持ったアンカットダイヤモンドの普遍的な価値。その二つが組み合わさることで生まれる、様々な表現の形を今回も堪能させていただきました。プレス奨励賞の作品は、このコンテストでは製作されませんが、これまで、これからの受賞作が実際のジュエリーとなって誰かのもとへ届けられることを願ってやみません。
宮坂 敦子 氏
アンカットのダイヤモンドならではの特徴(ほかの宝石にはない)を突き詰めて考えた作品と、それ以外の宝石(カットしたダイヤモンド含め)でも代替がきく作品と真っ二つに分かれたように思います。アンカットダイヤモンドだからこそ生まれるデザイン、成立する面白さも大いにあると思います。新しいアンカットダイヤモンドのデザインジャンルを切り開くようなデザインを期待しています。
清水井 朋子 氏
コンテストへの応募では作品の魅力を最大限にプレゼンテーションすることが重要です。
ユニークな発想や、そのまま商品化できそうな完成度の高い応募作がある中で、デザイン画が見にくかったり、デザインのポイントや装着イメージが説明不足でせっかくの作品の良さが伝わりにくいエントリーシートが何点かあったのは残念でした。
審査にあたっては「研磨済ダイヤモンドや他の宝石でなくアンカットダイヤモンドである意味」と、「3つのアンカットダイヤモンドが候補にある中で、この石を選んだ意味」に重きを置いて選びました。