第13回 アンカットダイヤモンドジュエリーコンテスト
新型コロナウイルスにより社会生活に多大な影響がありましたが、次第に催し物など再開されてきております。さて、今年度は172作品のご応募をいただきました。また審査員の皆様、各関係機関の方々のご理解とご協力により、無事にコンテストを開催できましたことを厚く御礼申し上げます。
今年は形、数など異なる3種類の魅力的なアンカットダイヤモンドがテーマ石でした。学生の方からジュエリーが好きな方、多種多様な業界でデザインや商品開発をされている方、クラフトマンの方など、幅広い層の方々が応募してくださり、とても楽しく見ごたえのある作品が集まったと感じました。
そして、その中から最優秀賞 1作品、優秀賞 2作品、プレス奨励賞 2作品、佳作 6作品を選出しました。審査はオンライン形式で進め、最終審査のみ審査員が作品を手に取って行いました。審査員の皆様には「テーマ石の独自性(魅力)をより一層引き立てているか」、「応募者が考えたデザインの意図が作品に反映され、活かされているか」、「着用性を考えてデザインされているか」「雑誌やデジタルメディアで取り上げてみたいか」などの視点で厳正に審査をしていただきました。
今後もSUWAはアンカットダイヤモンドジュエリーコンテストを通して、大自然が生み出した美しいダイヤモンドの魅力を皆様にお伝えできるよう、さらなる発展を目指してまいります。
令和4年9月吉日
諏訪貿易株式会社
取締役社長 横川 道男
応募者のコメント (デザインの意図)
触れてはいけないものとされるパンドラの箱。ギリシャ神話ではパンドーラという女性が好奇心で箱を開け災いを解き放してしまうが、箱の底には希望が残ったとされています。この希望をアンカットダイヤで表現しました。箱をイメージしたK18リングは透かしでダイヤが見え隠れし、箱を開けたくなる好奇心をそそるデザインに。重ねづけする様はまるで箱を開閉するかのようです。PTリングは槌目加工でナチュラルテイストにしました。表情の異なる2つのリングは不思議な雰囲気を醸し出し、パンドラの箱の魅惑さも表現しました。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
一般的に宝石は目立つようにデザインするものですが、このデザインは中の方に隠してあり、着けているとほとんどダイヤは見えません。それは常識を覆すもので、大切な物を箱にしまっておくという様に意図したものであれば、コンセプチュアルなデザインと言えるでしょう。着用性としては、二つのリングを重ねるとインパクトがあり、プラチナリング単体では日常でも着けることができ、また外のゴールドリングだけでも使えるという、多様性に面白さがあります。
諏訪 恭一 氏
ダイヤモンドの蛍光性という個体の個性を生かした面白さや、地球がうみだしたものであるという生命を感じる作品。
長嶋 泰子 氏
石を隠すことで、このテーマ石の特徴の一つでもある蛍光性が魅力的に引き出されています。また、このテーマ石とアンカットダイヤモンドそれぞれの特徴を一つの作品の中に見事に表現しているのも評価のポイントでした。日常的にも気軽に身につけやすいデザインで、プレス賞とW受賞も納得の結果です。
野澤 治仁 氏
作者の想いが上手に表現された作品です。ゴールドリングの隙間からアンカットダイヤモンドがのぞき見え、外枠のリングを外してみたくなります。実作品は存在感があり着用方法も重ねづけ、単品での着用と幅が広がるのもこのリングの特徴です。
松川 覚 氏
まず、作品タイトルでイメージを見る人に与える作品。作者は実際の石を見たのかは判らないが、ネット画面にしろ、石をよく見てデザインを考察したのかなと思える。カバーリングとかガードリングはよく目にするけど、ここまで中石を隠すのは珍しい。これこそが作者の狙いで、“原石だよ”とデザインで表しているのだと思う。実作したリングも本当にチラリとしか石が見えないけど、石は“在るよ”と訴えている。まさに箱を開けたくなる「私はアンカットダイヤモンドですよ」と言っていそうな作品です。
職人の方からメッセージ
最優秀賞【パンドラの箱】
制作者 松川 覚 氏
シンプルな槌目のインナーリングと八面体アンカットダイヤモンドの表面を模したアウトリングで構成されたデザイン。アウトリングの角度の少ない三角形面の仕上げには面だれしてしまう為かなり気を使いました。デザイナーはこの石の紹介動画をよく見て、この石が強い蛍光性を持っているのを頭に入れてデザインしたのかな?コロナ禍で実作品をいつ見られるのか分かりませんが、アウトリングを被せた状態でブラックライトを当てた時の石の主張は中々の物です。このダイヤモンドの魅力が良く引き出されていて作っていて楽しめました。これからもダイヤモンドの持つ色々な魅力を表現するデザインをしてください。
制作現場
応募者のコメント (デザインの意図)
昔から多くの人々に大切にされているダイヤモンドから、私はダイヤモンド自身が守られている・包まれているというイメージが浮かびました。アンカットダイヤモンドが前方に出ていて、浮かんでいるような構造になっているため、よりダイヤモンドに目が惹かれるデザインとなっています。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
軽やかで、身に着けやすく、アンカットダイヤを全面に見せている美しいデザイン画です。しかし、実作になった時このデザイン画のように出来上がるのかという問題点がありました。身に着けた時、下向きに傾いてしまうと思いましたが、その様であっても良さはあるということで最終審査まで残りました。だが、トップの丸線が太過ぎ、チェーンが細く長過ぎるので、イメージの様なチョーカーになっていない事、石留の難しさやアンカットダイヤが正八面体ではない為に左右対称にならなかった事が残念でした。デザイン画としては魅力的なので、少し変えていれば、より素晴らしいジュエリーになっていたと思います。
諏訪 恭一 氏
蕾が開いたようなデザインで生命を感じる。チョーカーのようなら首元でデザインが正面を向くと思うので良かったが、チェーンだとダラっと下がってデザイン画のようにモチーフ部分が正面を向かないので、その点が惜しい。
長嶋 泰子 氏
実作では、作者の意図とは少し違う作品に仕上がりましたが、新鮮で可愛らしく身につけてみたいデザインという点で評価できる作品です。しかし、石留めのデザインにもう一工夫欲しかったのと、アンカットダイヤモンドでなくても成立するデザインだったということで最優秀賞にはとどきませんでしたが、ぜひこのデザインを元にバリエーションを考えてみると新しい発見があると思います。
野澤 治仁 氏
作者が想い描いたダイヤモンドを浮かんでいるように見せる構造により、多方向からアンカットダイヤモンドの表情が見え、アンカットダイヤモンドの良さを引き出す作品になったと思います。フレーム(包むもの)の丸みを帯びた線構成は軽やかで可愛らしく、若い世代にアピールできるのではと感じます。ペンダントとして下げた時のフレームのバランスや傾きに工夫があるとさらに良いでしょう。
松川 覚 氏
一目でデザインのコンセプトがハッキリと判る作品です。線で構成される左右の枠は、ダイヤモンドより出しゃばることも無く、ドングリの傘の様で可愛らしい。またそのカーブがやさしく原石を包み込む感じをよく表してます。デザイン画の時はこの画の様にうまく見えるのかな、と思っていましたが、実際の作品を見るとどの方向を向いていても可愛らしく、バランスの良い作品になっていました。
職人の方からメッセージ
優秀賞【つつみ】
制作者 川島 昇 氏
デザイン画を見た時、デザイン画のようにモチーフが正面を向かない構造なので、身に着けるとくす玉が割れたような雰囲気になると感じた。実際に身に着けた時にどうなのか、という点をしっかり考えて構想を練ったほうが良い。発想は良いので、身に着ける人の気持ち(自分自身が身に着けた時のことを考えても良い)になってデザインすると更に良いものができると思う。頑張ってください!
制作現場
応募者のコメント (デザインの意図)
探求の末に、大切なものや可能性を発見できたときの喜びを、ダイヤモンドの原石が発見されたシーンに見立てました。ダイヤモンドの原石も研磨され、さらに美しいものに発展する可能性を秘めています。その可能性自体も美しく、こころ踊るものであることも表現したいと思いました。探し出したときの情景をバラバラに並べられた原石やゴールドとプラチナのア―チに、これからの可能性にこころ踊るような気持ちをシャカ玉のかざりで表現しています。
審査員からのコメント
菅原 晴子 氏
砂の中からキラキラと輝くダイヤモンドを発見した喜びが、素直に伝わるデザインです。アンカットダイヤを寄せて配置する事で、ダイヤが小さくても存在感が出ており、釈迦玉でダイヤの石留がされているためにナチュラルで可愛く仕上がっています。デザイン画よりも実作はダイヤが地金に埋まっていますが、石留の為には仕方のないことでしょう。全体的には現代的なデザインになっており、どの様な場面でも使える魅力的なリングで、商品としても優れていると思います。
諏訪 恭一 氏
デザイン画の状態では正八面体のアンカットがよく表現できそうだと感じたが、地金がゴールドだったのが惜しい。プラチナだとダイヤモンドの良さが更に引き出せたと思う。
長嶋 泰子 氏
デザイン画の段階では、工業的なデザインに寄って見えましたが、実作では作者の意図がより明確になり、美しく仕上がりました。石を集めるというアイデアは、アンカットダイヤモンドとしては比較的新しい試みということで評価も高かったのですが、同時にアンカットダイヤモンドである必然性が弱いという点が惜しい作品でした。
野澤 治仁 氏
ゴールドとプラチナ線のアーチの線は、ダイヤモンドを衝撃から守る役目かと思いましたが、アーチがないデザインを想像すると平凡な感じがします。10石の正八面体のダイヤモンドをランダムに留めるデザインは、小さなダイヤモンドがまとまることによりインパクトが出ます。着用するとなお一層リングの良さが引き立つものと思います。
松川 覚 氏
作品を見て石を探す皿状の道具を思い起こしました。シンプルで無機質なアーチと円の織り成す形の中に不揃いな形の原石をランダムに散りばめて原石の魅力を表していると思います。デザインの意図からするともう少しランダムに見える様に石座部分の皿を大きくして石の偏りを出すとか、シンプルな形の中にもリングとしての立体感を考えるとより喜びがますのではと思います。
職人の方からメッセージ
優秀賞【発見の喜び】
制作者 横山 達三 氏
発想が凄く良いね!ただ、ちょっとまとまり過ぎているから、もうちょっと歪な感じが出ても良いと思う。線も太くても良かったかな。デザイン画のサイズだと円が小さかったので、一回り大きく作ってる。あと地金はつや消しにした方が石が目立って更に良くなったかな。とはいえ、普段使いしやすいデザインだし、身に着けやすくて可愛らしいと思う。これからも頑張ってください!
制作現場
応募者のコメント (デザインの意図)
※ こちらの作品は最優秀賞も受賞されております。 ダブル受賞おめでとうございます。応募者のコメ ントは割愛させていただきます。
審査員からのコメント
清水井 朋子 氏
最近、エメラルドカットやオーバルシェイプのダイヤモンドを横長にセットしたリングをよく見かけますが課題石となったこのアンカットダイヤモンドも、横長にセットすることでデザインの可能性が広がったと思います。二つのリングを重ね合わせるデザインにストーリー性や楽しさもあり、つけてみたいと感じる作品でした。
本間 恵子 氏
2通りの楽しみ方を提案したという点で他と異なり、実際につけて楽しめるデザインとなっているのが好ましい。デザインの意図として、ふれてはいけないパンドラの箱をイメージしたというが、パンドラのパンは「すべて」「全世界」を意味し(パンデミックのパンと同じ)、ドーラーは「与える」「贈る」を意味している、パンドラは本来は大地母神だったとされるのだ。作者がこの点を考慮していたかどうかわからないが、アンカットダイヤモンドが大地からの贈り物であることを暗に示唆している点も興味深い。
源川 暢子 氏
パンドラの匣をイメージしたデザインは、二つのリングを重ねづけしたり一つずつ使ったりすることで、アンカットダイヤモンドの異なる表情が見えてくることが最大の魅力です。ゴツゴツした印象の“匣”からアンカットダイヤモンドが覗く様子が、アンカットダイヤモンドの神秘的なイメージにぴったりで、身に着ける人にジュエリーをまとうワクワク感をもたらしてくれるものだと感じました。シーンやその日の気分で使い分けができるのも楽しそうです。
宮坂 敦子 氏
「パンドラの箱を開ける」というイメージを、ゴールドとプラチナの2つのリングで表現したのが楽しい。上側のゴールドのリングの隙間からアンカットがのぞくという趣向も遊び心があります。プラチナのリングはアンカットダイヤモンドのプリミティブな美しさにフォーカスした、とてもシンプルなデザインですが、単体でも、ゴ ールドのリングとセットでゴージャスにも見せられます。アイデアが活きた作品です。
渡辺 郁子 氏
「パンドラの箱」というテーマを巧みに表現した作品です。不定形のダイヤモンドを箱に見立てた枠から見え隠れするという発想が面白いと思いました。人工的で幾何学的なゴールドのフレームと、自然のままの不定形のアンカットダイヤモンドの相反する組み合わせも目を引きました。
応募者のコメント (デザインの意図)
インフィニティのデザインにアンカットダイヤモンドを全面に配置し、永遠にめぐる時や人の想いを表現しました。交差させたインフィニティのパーツにアンカットダイヤモンドを3点で留める事で、どの面から見てもアンカットダイヤモンドの美しさが引き立つようにしました。
審査員からのコメント
清水井 朋子 氏
完成度が高く、製作して商品として店頭に並ぶに値するデザインと思います。一方で、どこかにもう少し提案性があると、アイテムとして、より魅力的になると思います。トップ部分を横にチェーンにセットしてもつけられる、イヤリングとのセットづかいなど、「新しさ」「楽しさ」「驚き」がプラスされると良いと思いました。
本間 恵子 氏
実際につけてみたいこなれたデザインである点と、見た目がインパクトに欠ける点とで評価が割れたが、洗練された完成度の高いジュエリーになっていることでは異論がなく、この作品を推した。欲をいえば、縦向きだけでなく横向きにもつけたいとか、お揃いでピアスもあったらいいのに、などとも考えたが、これはデザインに発展性があって現時点よりもっとよくなる可能性があるということに他ならない。
源川 暢子 氏
10石のアンカットダイヤモンドを、インフィニティのデザインと共にネックレスに仕立てる作品は、とてもノーブルでエレガント。今すぐジュエリー売り場に並べられるような完成度の高いデザインで、身につけたら間違いなく美しいだろうということが想像できました。完成度が高いゆえに、斬新さや冒険という意味では若干インパクトが弱いのかもしれませんが、世代を超えて“受け継がれていく”ジュエリーだと感じました。
宮坂 敦子 氏
インフィニティのパーツを連ねるというコンセプトをブレることなく美しいデザインに成立させた、品の良い作品です。セットする石が一般的なブリリアントカットのメレダイヤモンドでももちろん成立するデザインですが、アンカットダイヤモンドにすることで、ひねりのある、話題にしたくなるデザインに昇華しました。チェーンとトップを繋ぐ部分のパーツが丸カンではなく、もうひとつデザインがあるとより個性的な作品になったようにも思います。
渡辺 郁子 氏
インフィニティはよくジュエリーに採用されるデザインですが、胸元で真っ直ぐ下がるようにインフィニティのパーツをつなげ、小粒のアンカットダイヤモンドがどの角度からも見えるように留めたアイデアが新鮮です。軽快な雰囲気があり、しなやかな素材のファッションに合いそうです。
【若者】
房枝 直輝 (フサエダ ナオキ) さん
【Embryo -生まれくる光-】
山岡 瑞葵 (ヤマオカ ミズキ) さん
【海蛍の梦】
趙 彬嵐 (チョウ ヒンラン) さん
【ラフカット】
荻原 真琴 (オギハラ マコト) さん
【まっすぐ】
並木 愛子 (ナミキ アイコ) さん
【HIDANE】
綿貫 由菜 (ワタヌキ ユナ) さん
審査員
菅原 晴子 氏
私はアンカットダイヤの美しさに魅かれている者の一人として、アンカットダイヤの魅力を世の中に示すこのコンペの審査にあたることは光栄ですし、応募されたデザインを拝見するのが楽しみです。従って、このコンテストではアンカットダイヤの魅力がデザインに生かされているかを第一に考えています。今回はダイヤを良く観察し、このアンカットダイヤからインスピレーションを得てデザインされた物が多々あって良かったと思います。そして新鮮なデザインで、石留もそのデザインに合うような方法が採られているとより興味をそそられます。しかし、この様なチャレンジは制作可能かという問題が生じ、審査にあたっては悩ましいところです。
また、私自身は自分でデザインして制作をしますので、制作しながらバランスを見て調整しますが、最初から全て完璧にデザインし、指示書を作成するのはとても難しく、また制作者も既成の方法に無い石留など、ご苦労が多いことと感じます。斬新なアイデアが求められ、しかもそれを製品にするところがこのコンペの難しい所でもあり、面白い所でもあると思います。
諏訪 恭一 氏
コンテスト全体のレベルは上がっている。これまで突拍子もないものが来ることもあったが、それが減ってきているので、次回も楽しみにしています。個性あるアンカットダイヤモンドをどう引き立たせるかは、デザイナーの腕の見せ所なので、ぜひ頑張って欲しい。
長嶋 泰子 氏
昨年に続き、今年も幅広い層からの応募があることが伺えました。個性的でユニークな作品が多く見受けられる一方で、以前の入賞作にとらわれているようなデザインも多数あり、方向性が二分していると感じました。
現実的に形になりにくそうなアイデアでも実作ができるのは、このコンテストの特長でもあり経験豊かなクラフトマンの存在が大きいです。今回は、応募者にはもっと自由な発想で挑戦してほしいし、その想いを受け取れるような審査をしていきたいとあらためて考えさせられるコンテストとなりました。
今年も楽しい作品を数多く拝見させていただき、ありがとうございました。
野澤 治仁 氏
作品のレベルが上がり審査決定はいつも以上の時間を要しました。最優秀賞、優秀賞、プレス奨励賞に選ばれた作品はどれも素晴らしい作品でした。今後のご活躍を期待します。おめでとうございます。
残念ながら賞に選ばれなかった作品の中には、ダイヤモンドのサイズ、各パーツのサイズ、寸法を見直すことで実作品を想像しやすく、制作での問題点も発見でき、制作に不向きなデザインを避けられるものと思います。どの作品も着目点は面白いので次回への希望も含めお伝えします。
松川 覚 氏
このコンテストも回数を重ねて応募作品のレベルアップが感じられます。しかし全体を見て、悪い意味でよくまとまっていて、作者の熱意が伝わってくる様な物がすこし少ないかなと思います。応募者がまじめにアンカットダイヤモンドと向き合い考察しているのは作品に表れていますが、外出制限されていたためかインターネットの便利さに騙されたか、何となく小さくまとまってしまっている様な気がします。実生活での直に物に触れた時の感動、発見が本人のアウトプットに大きな差となって表れ、人を唸らせる様なものが出てくると思います。行動制限の解けた来年はもっと胸が躍る作品を期待しています。
プレス奨励賞審査員
清水井 朋子 氏
ジュエリーの楽しみ方が多様化し、新しいアイテムが楽しまれたり、ジェンダーを超えて身に付けられるようになりつつある今、応募されたデザインにも創り手の個性が感じられ、あれこれ迷いながら、「アンカットダイヤモンドである意義」と「新しさが感じられること」を基準に選びました。
ダイヤモンドのジュエリーは永遠のものですので目先のトレンドに左右されすぎることは感心しませんが、一方で「時代の風」を感じられることも大切。
これからも、次の定番となって残っていくデザインの登場を期待したいと思います。
本間 恵子 氏
回数を重ねるにつれ、ファンシーな作品が減り、構想をよく練った上でデザインされた作品がぐっと増えてきたように思う。実際の着用には耐えないけれど、アイデアは面白いという作品も多く、目を引いた。
ただ審査の趣旨は「ジャーナリストの視点で選ぶ」ということであるから、実際に自分の記事で紹介したいようなキャッチーなデザインであるかどうかが基点になる。受賞作が商業的かつ現実的であるのはそのためだ。
源川 暢子 氏
今年もたくさんの素晴らしいデザインに出会え、楽しく審査させていただきました。ありがとうございました。「このジュエリーを、こんなシーンで身につけてみたい」「実際に目の前にあったら、どんなジュエリーだろう」というように、それぞれのアンカットダイヤモンドをジュエリーに仕立てた様子を想像して、幸せな気分に浸ることができるのもこのコンテストの醍醐味です。アンカットダイヤモンドという、大地からの唯一無二の贈り物を主役としたジュエリー。難しいテーマですが、毎回応募者の方々の発想、デザイン、作品への想いには感動します。次回も、魅力的な作品に出会えることを期待しております!
宮坂 敦子 氏
「プレス賞」という賞の特性上、人に話したくなるような仕掛けや面白さ、特異性がある作品を選ぶことを意識しました。通常のブリリアントカットダイヤモンドとは異なる、「アンカットダイヤモンド」ならではの個性をどう表現するか――今回のコンテストではラグジュアリー、パンク、可憐、といろいろな作品が集まり、石の可能性をいっそう感じるコンテストでした。
渡辺 郁子 氏
「アンカットダイヤモンドジュエリーコンテスト」は回を重ねるごとに、目新しいデザインが多くなり、審査に悩みます。全体に以前よりも着用性を配慮したリアルに使えるデザインが目につきました。NO.64「パンドラの箱」はプラチナリングだけでもつけられ、汎用性も魅力です。NO.164「めぐる」は今のファッションに合うネックレスです。今回の応募作品には、この2つ以外にも自分自身がつけてみたいというものがいくつかありました。ジュエリーは身につけるものなので、デザインと着用性のバランスを取るのが大事です。その問題をクリアした作品が多いように思えました。