ごあいさつ

第14回 アンカットダイヤモンドジュエリーコンテスト

第14回目となる今年度のコンテストは、過去最多278作品のご応募をいただきました。ご応募いただいた皆様、また審査員の皆様、各関係機関の方々のご協力により、無事にコンテストを開催できましたことを厚く御礼申し上げます。

今年も3種類の魅力的なアンカットダイヤモンドがテーマ石でした。国内外の学生の方からジュエリーが好きな方、多種多様な業界でデザインや商品開発をされている方など、幅広い層の方々が応募してくださり、とてもレベルの高い見ごたえのある作品が集まったと感じました。

そして、その中から最優秀賞 1作品、優秀賞 2作品、プレス奨励賞 2作品、佳作 6作品を選出しました。審査は1次から3次審査までをオンライン上で約1か月かけてしっかりと進め、最終審査は審査員が完成した作品を実際に手に取って行いました。

審査員の皆様には「テーマ石の独自性(魅力)をより一層引き立てているか」、「応募者が考えたデザインの意図が作品に反映され、活かされているか」、「着用性を考えてデザインされているか」「雑誌やデジタルメディアで取り上げてみたいか」などの視点で厳正に審査をしていただきました。

今後もSUWAはアンカットダイヤモンドジュエリーコンテストを通して、大自然が生み出した美しいダイヤモンドの魅力を皆様にお伝えできるよう、さらなる発展を目指してまいります。

令和5年9月吉日
諏訪貿易株式会社
取締役社長 横川 道男


審査結果発表

最優秀賞

作品タイトル【光を発生】

【光を発生】
テーマ石 A
趙美智 さん

作品タイトル【光を発生】

応募者のコメント (デザインの意図)

カットされていない状態で研磨されたダイヤモンドは、発掘されたばかりの魅力を備えた原石です。ダイヤモンドは金で挟まれており、ダイヤモンドの顔の一部しか見えず、一部の部分は特別な角度から見る必要があるため、研磨されていないダイヤモンドは研磨されたダイヤモンドよりも視野角が広くなります。
それは隠すことのできない光なので、注意深く見つけてください。

審査員からのコメント

長嶋 泰子 氏
これまでにないセッティングが新しい作品です。テーマ石はやや黄味がかっており、18KGとのコンビではあまり目立たちませんが、ブラックライト下では、「光を発生」する様子が明快であり、作者の意図そのままを実作として完成させることができましたという点からも、最優秀賞としてふさわしいでしょう。
野澤 治仁 氏
丸みのあるフォルムがアンカットダイヤモンドの形状をより引き立てることに成功したデザインです。無駄を省いたデザインはシンプルですが、リングの構造と石留に関して疑問が残りました。ただ実作ではデザインの良さを生かす改善がされ着用性に優れた良い作品になりました。
菅原 晴子 氏
なめらかなフォルムのリングの中心に、自然な岩肌のアンカットダイヤがセットされている姿は、彫刻的でとても魅力があります。既成の爪止めや覆輪留めではなく、リングの構造でさりげなく留めるのは、アンカットダイヤを生かす素晴らしいでアイデアだと思います。デザイン画では、フリーサイズの様に描かれていますが、それではダイヤが外れやすいために、制作では接合された形としました。また地金の肉取りなどが、制作者のセンスにより絶妙なバランスで美しく仕上がり、デザイン画だけでなく制作者に助けられているところが大きいと感じます。
松川 覚 氏
デザインは機能性を考えたシンプルな物がベストだと言わんばかりの形で毛筆の丸の様なワンモーションで石を挟んで留めるシンプルな形、単純だけど甲丸状のリングにする事で装飾品としての色気をプラスしている様に思う。テーマ石はすっきりした八面体では無く色々な表情のある石なので(このシンプルなリングの形が石落ちの不安からリングの一部をつなげる変更もあったが)アンカットダイヤの魅力を良く表していると思った。
吉田 由子 氏
アンカットダイヤモンドの存在感そのものを、留め方ひとつで引き立たせるアイディア、見事でした。強度との兼ね合いで、指あたりの部分を繋げなければなりませんでしたが、繋がる部分を徐々に細くしたり、裏抜きをしたりと、職人の工夫とセンスが光っています。

職人の方からメッセージ

最優秀賞【光を発生】
制作者 川島 昇 氏

デザイン画ではアームの下が繋がっていなかったので、耐久性を考えこちらで繋げた。良いアンカットダイヤモンドは安心して留められるので、この石留のデザインでも問題なくできたが、しっかり留めないとガタツクので余分に地金を盛り付けておいて、おもいっきり叩いて地金を潰して留めることで隙間をなくした。また石を直接火に入れて蝋を流し込んで隙間に地金をがっちり入れた。(これは高品質のダイヤモンドだからできた方法)
デザインする人も素材の本質を良く知り、理解すると良い。できれば自分でも作ってみると良いと思う。ジュエリーに限らず、本質を知った上でデザインしていくと良い。そうすると実用的で素材を活かしたものができる。

制作現場


優秀賞

作品タイトル【freedom】

作品タイトル【freedom】
テーマ石 B
吉田 海羽 さん

作品タイトル【freedom】

応募者のコメント (デザインの意図)

世界に1つしかない自由な形。「同じ」が存在しない人間の世界で自分だけの自由な人生を…
私がこの石を見て感じたことは「自由」です。もちろんアンカットダイヤモンドなので世界に同じ形のものは存在しないと思います。形だけでなく、表面の凹凸、柄などもそれぞれ違います。それを私は自由と捉えました。ジュエリーにする過程で石の自由を奪わず、四方八方からのダイヤモンドの美しさを味わえるようにデザインしました。PT950の丸線もトライゴンを元に三角形を意識してデザインしました。

審査員からのコメント

長嶋 泰子 氏
ほぼデザイン画通りに実作され、またデザイン画以上に現物が良い点は評価できる。シンプルだが、美しい作品です。しかし、地金に包まれた状態で、石が引っかかってしまい、作者の想いが十分に反映できなかったのが惜しい作品です。
野澤 治仁 氏
閉じ込められたアンカットダイヤモンドを、石留に頼らず石の全体を見せるという発想。石が自由に動き、軽快な光を放つペンダントは楽しいデザインです。また付け方もチェーンをどこの空間に入れても使用出来きるのでデザインのバリエーションが広がります。
菅原 晴子 氏
現代的でTPO問わず身に着けやすいジュエリーです。ダイヤを挟み込むというアイデアも、アンカットダイヤならではの、どの方向から見ても美しいという特性を踏まえています。ジュエリーの固定観念からすると正面と裏面や上下を考えたデザインになりますが、その考えから自由になり、チェーンや紐など好みの所に通して使用できるのが魅力です。幾何学的な地金部分はインパクトがあり良いと思ったのですが、実作では地金部分の主張が強いので、アンカットダイヤの印象が薄くなってしまったのが残念でした。
松川 覚 氏
石留をしないでジュエリーに仕立てる所がフリーダムのネーミングかな?
コロンとした石をドーナツ形の建築物を思わせるトラレスフレームに閉じ込めて自由に動く不定形な石とカチッとした円と三角という規則正しい中での対比、目の付け所が良いですね。「形状は機能に従う」を具現化したシンプルな形、三角形を平面では無く二次的な丸みを持たせたのもジュエリーとして良いと思う。デザイン画の段階での完成度の高さに高評価を与えたい。ただ石がコロコロと動かないのは少し残念ではある。
吉田 由子 氏
円環の中でアンカットダイヤモンドを自由に動かし眺めることで、身につける人と、宝石に対話が生まれる作品だと思います。一方どうしても幾何学的な線に目が行ってしまい、ダイヤモンド原石の存在感が薄らいでいるように感じました。

職人の方からメッセージ

優秀賞【freedom】
制作者 松川 覚 氏

デザイン画を見てこれはCADでの制作だな。とCADで作りました。中石が動くのがこの作品の肝なので、石と枠とのバランスに注意して組み上げましたが、やはりと言うか石の動きが悪くデザイナーさんの思い描く形には少し届きませんでした。
デザインとして見れば三角フレームは丸線で正解と思いますが、ジュエリーと考えると面白さを出す為に一捻り必要かなと思います。ただ、この様な工業的なデザインはジュエリーとしてまだまだ未来が有ると思うので、これからも頑張ってデザインしてください。

制作現場


優秀賞

作品タイトル【Potentiality】

作品タイトル【Potentiality】(可能性)
テーマ石 C
大野 真珠 さん

作品タイトル【Potentiality】(可能性)

応募者のコメント (デザインの意図)

「ダイヤの原石」とは、未来に可能性を秘める人物を指すことがあります。私が今回デザインしたのは、身に着ける方を輝かしい未来へと導くパワーを持つジュエリーです。未来を明るく照らす太陽のモチーフ、くるりと回すと原石があらわれる二面性のある指輪。「輝かしい光を放つためには、必ず影も必要である。」そんな想いを込めて、辛い時も前向きな時も、心の支えになるジュエリーとしてデザインいたしました。

審査員からのコメント

長嶋 泰子 氏
プリミティブなようでモダン。細かいところまで工夫が凝らされており、楽しいデザインです。しかし、表面処理をすべて鏡面にした点は安易だったかもしれない。ペンダントヘッドとして楽しめるなど、作者の意図にはない可能性を感じる作品です。そもそも要素が多いデザインで、検討の余地が多分にあるので、今後の仕事への足がかりにして欲しい。
野澤 治仁 氏
八面体の上下が回転する構造は興味を引きます。回転することでリングのデザインを変える面白さはバランスの良いこのリングの魅力になっています。
菅原 晴子 氏
テーマ石Cが正8面体であるという特性を生かしてデザインがされ、また回転した時の変化を求めたデザインです。しかし、太陽のモチーフがアンカットダイヤを覆っているために、あまりアンカットダイヤが見えず、モチーフのメレダイヤの方が目立っているのが残念でした。デザインの要素を抑え、アンカットダイヤをより良く見せる事に意識を集中した方が良いかと思います。なお、ダイヤ部分の回転を妨げない様に、リングの一部を切っているのかもしれませんが、着用すると指に当たるので、もう一工夫を望みます。
松川 覚 氏
カチッとした八面体をカチッと使う。石から受けた印象を素直にリングとして形にしている所が良いですね。すごく単純な形になりがちなすっきりとした石を太陽のモチーフと中石を回転させて色々な面を見せてジュエリーとしての作者の思い描いたストーリーを上手く出せている所も良いと思います。ただ完成度が高いが故の可能性がが少し影を潜めてしまったのがチョット残念。
吉田 由子 氏
テーマ石への力強い解釈が、デザインに過不足なく落とし込まれ、指示も綿密で誠実な作品と感じました。ただ、端正なソーヤブルの全ての姿は、覆うことなくそのまま眺めていたいと思います。

職人の方からメッセージ

優秀賞【Potentiality】(可能性)
制作者 横山 達三 氏

まずデザイン画を見た時に頭を悩ませたのが、回転させた上にリングの下が繋がってないので、プラチナで強度を持たせて作るにはどうするかということ。
そこでピンクゴールド並に強度のあるプラチナ950のルテニウム5%を使用し、これでリング自体の強度は十分に。
次に石枠の回転は、石枠から軸になるピンを伸ばして両端の円錐部にさしてロー付けで結合させました。
形はシンプルですが構造や使用地金の工夫で形にすることができました。
制作指示書では“全て鏡面仕上げ”とありましたが、綺麗すぎるアンカットダイヤが鏡面仕上げの枠に囲まれると全く目立たなくなるので、石枠のみマット加工にしました。
今まで作ってきた経験上、透明度の高いアンカットダイヤにはマット加工や荒らし加工がダイヤの良さをだしてくれると思います。
ダイヤの面と太陽モチーフの面が回転するという発想はすごく面白いと思いますが、太陽の面からダイヤの八面体がもう少し見えても良かったのでは⁈
線の太さやダイヤの留め方など工夫されれば、よりアンカットダイヤの形の良さが強調されたように思います。

制作現場


プレス奨励賞

作品タイトル【始まりの一滴】
テーマ石 B
ワザルカル 陽子 さん

作品タイトル【始まりの一滴】

応募者のコメント (デザインの意図)

テーマ石Bを世界に落ちた最初の「始まりの一滴」としてとらえ、この小さな一滴はやがて川となり、大地を潤し、その大地は新たな生命を育み、姿形を変えながらも循環していく世界のイメージを2WAYリングにして表現しました。

審査員からのコメント

宮坂 敦子 氏
2WAY で使える点、アンカットダイヤモンドが指の間でコロコロ揺れて輝く点などとても面白みがあり、さらに上品なデザインです。カラットのサイズ感も小指と薬指のリングならバランス良く納まると思われます。このアンカットダイヤモンドを「はじまりの一滴」と捉えたインスピレーションも評価したいです。制作指示書も明解で綺麗です。
清水井 朋子 氏
ダブルリングにもシングルリングにもなるというユニークな発想と、そのトランスフォームの要(かなめ)として、正八面体でないいびつなアンカットダイヤモンドが生きていると感じました。ジュエリーは一過性のトレンドアイテムではありませんが「時代の気分」や「最新のファッションにコーディネートしたくなる」ことは新しい作品を紹介する上で重要な要素なので選出させていただきました。
渡辺 郁子 氏
プレス奨励賞審査員5名の意見が初めて全員一致した作品です。アンカットダイヤモンドを小さな一滴にたとえ、大地、生命へとつなぐコンセプトに、作者のイマジネーションの深さや広さを感じました。そのコンセプトを、実際につけたくなるデザイン性やファッション性のあるリングに具現化している点にも注目しました。2通りの方法で着用でき、可動性のあるデザインは、トレンドやマーケットニーズも押さえており、現実的に売れる商品になるのではないかと思いました。
本間 恵子 氏
きらめきのひとしずくが変容しながら循環していく、というイメージを、開いたり閉じたりするリングという形でわかりやすく上手に表現できている。ダブルフィンガーリングやピンキーリングというアイテムもまた今日的で、実際につけてみたいと思わせる。デザインは細部がさりげなく凝っていて、1.57 カラットもの稀少なアンカットダイヤモンドにふさわしい高級感が出せているのも好印象だった。
源川 暢子 氏
ダブルのリングに水滴のように揺れる不定形のアンカットダイヤモンドが、繊細で優しいイメージ。アンカットダイヤモンドの神秘的な世界観が、柔らかい雰囲気で表現されているところが印象的でした。今回、注目された作品はリングが多かったのですが、これはダブルリングとピンキーリング、ふた通りの着け方ができる自由度とファッション性の高さも、大人の女性にふさわしいデザインだと感じました。

作品タイトル【流れ星】
テーマ石 C
儲冰潔 さん

作品タイトル【流れ星】

応募者のコメント (デザインの意図)

自然からもらったプレゼント―
ダイヤモンドが流れ星のように貴重だという考えでデザインしました。

審査員からのコメント

宮坂 敦子 氏
夜空を滑り行く流れ星がまさに指の上に降り落ちてきたような、詩的で人目を惹くデザインです。小指と薬指の間でキラリとアンカットダイヤモンドが光る様が想像でき、着けている人も見る人も楽しめそうです。引っ掛かりが出て装着感に難がある可能性は否めませんが、シーンを選んで着けることもジュエリーの一つの有り様でしょう。
清水井 朋子 氏
透明度の高い正八面体のアンカットダイヤモンドが流れ星という発想に相応しく、指の上でなく指と指の間にセットされるデザインに惹かれました。最近見かける頻度が増えてきたダブルリングですがが、一つの指に通すスタイルでありながら流れ星の尾が指をまたいで繋がっているように感じられるのが新鮮でした。
渡辺 郁子 氏
リングの新しいつけ方を提案しているところに着目しました。すっと流れるプラチナのラインに小さなアンカットダイヤモンドの輝きは、クールでありながらエレガントな印象を受けます。オリジナリティとシンプリシティを調和させることは難しい課題ですが、それを消化している作品です。
本間 恵子 氏
ごくシンプルなフォルムで、小さいながらも透明度の高い正八面体のアンカットダイヤモンドをうまく際立たせている。プラチナ部分が主で、ダイヤモンドが従になる前のギリギリのところでバランスをとったデザインだ。クラシックにならないエッジィなジュエリーとして実際につけてみたいという気持ちになった。
源川 暢子 氏
三本の指にかかる流線型のリングは、パーティーの席など華やかなシーンで目を引きそうな素敵なデザインでした。テーマ石 C は正八面体という特性もあり、リングでも力強いデザインが目立ちましたが、これは正八面体のアンカットダイヤモンドを「流星」に見立てたコンセプトとリング自体の造りで洗練されたイメージがありました。実際の着用感は少し気になりますが、着けた時のインパクトは大きいと思います。


佳作

【Earthenware】阿久戸 香 さん

【Earthenware】
テーマ石 A
阿久戸 香 さん

【宝石を眺めて楽しむ形の提案】有吉 央 さん

【宝石を眺めて楽しむ形の提案】
テーマ石 A
有吉 央 さん

【翔】瀬戸 ひかり さん

【翔】
テーマ石 B
瀬戸 ひかり さん

【Summer Gem】 盒 里奈 さん

【Summer Gem】
テーマ石 B
髙橋 里奈 さん

【プラトンの展示‐A】Hsiao‐Ching’Lee さん

【プラトンの展示‐A】
(Plato’s Presentation-A)
テーマ石 C
Hsiao‐Ching’Lee さん

【光】名取 絵美 さん

【光】
テーマ石 C
名取 絵美 さん


コンテスト総評

審査員

長嶋 泰子 氏
今回の応募作品は、通年よりも実作してみたいデザイン画が多かったように感じました。また、実作された作品は、いずれもデザイン画以上の出来栄えでした。審査基準を満たしつつも、これまでにないデザインが出てきたことは喜ばしいことです。
また、どの作品を実作するかについて、今回の審査会では応募者のデザイン画を足がかりに、多くの可能性について話し合われました。さらに、「世界に一つしかない石」をジュエリーとして仕立てるという行為は、合理性とはかけ離れた人間の面白さを感じられる良い機会です。
「人間よりもAIのクリエイティビティが勝るのでは?」と囁かれる時代ですが、あらためて、人間を集合体として捉えるのではなく、一人一人の個性にフォーカスすることが、本来のジュエリーの在り方ということを、このコンテストを通して思い起こしていただけたらと思います。
最後に「試行錯誤」について述べます。
応募する前に、仕上がったデザイン画をもう一度良く見てください。おそらく制作中には気づかなかった新たな発見や改善点があると思います。また、同じアイデアを使って複数の作品を提出している方もいたようですが、一つのアイデアを複数に使い回すよりも、一つのアイデアに深く向き合って一つのデザインとして作り込むことを、ぜひ心がけてください。限界を超えることが、新しい価値を生み出すということを忘れないで。
野澤 治仁 氏
今回も興味深く審査させていただきました。時代を反映した作品、実用性に重きを置いた作品、アンカットダイヤモンドの可能性に挑戦した作品など、個々の想いをデザイン画から感じ取れました。魅力的で、実用性を備えた作品であっても「石を留める」「石を固定する」その部分の制作が困難と思えるデザインは現実性が失われます。ジュエリーの構造や仕組みを把握しもう一歩、踏み込んだデザインを期待します。
菅原 晴子 氏
審査に当たり毎回悩むポイントは、アンカットダイヤの魅力を生かすデザイン、今の世の中に無いような斬新なデザイン、しかも着用性があり、ジュエリーとして魅力的であることです。そして最も困難な審査基準は制作可能というところです。制作指示書を描かなければなりませんので、応募者は石留について知っていなければなりません。従ってこの基準をクリアーするのはプロのデザイナーでも難しいでしょう。応募者は高校生やジュエリーデザインとは無縁の職業の方までおられるようです。最終審査では石留が出来るかが特に問題になりますが、制作指示書のままでは石留が出来ない場合は選考から外すか、フォローによって制作するか意見が分かれるところです。私としては、制作者が苦労されるかとも思いますが、多少のフォローがあってもアンカットダイヤの特性を生かした留め方の提案や、時代に合った新しいジュエリーが見たいと思っております。
松川 覚 氏
今年はコンテスト応募作品のレベルアップ、完成度の高さを強く感じました。応募作品の点数も多くて完成度も高い。レベルの高い多くの作品を見ていると、選ぶ側のわがままでもっと突拍子もないデザインを見てみたくなったのも事実ですが、審査員として楽しく大いに悩ませてもらいました。普通のジュエリーコンテストと違いテーマ石が個で決まっているので、アンカットダイヤに合わせて構想を練るのは大変だったと思います。結果として最優秀賞、優秀賞そして奨励賞が選ばれましたが、これらの素晴らしい作品に劣らず次点作もかなりの高評価でした。これからもアンカットダイヤモンドの魅力を一層表現する新しい作品に多く出会えることを期待します。
吉田 由子 氏
テーマ石からはじまる、豊かな発想の数々に圧倒されました。SUWAアンカットダイヤモンドジュエリーコンテストの醍醐味は、特に最終的に立体にするところにあると思います。立体にした時にどうなるか、ダイヤモンド原石をどうやって留めることができるか、コンセプトや思いと同時に、1番難しく楽しい問いに、これからも挑戦し続けていただきたいと思います。

プレス奨励賞審査員

宮坂 敦子 氏
応募点数も多く、コロナ禍がようやく明けたことへののびやかな気分が感じられました。カジュアルでライト感覚なジュエリーの応募作が多い印象を受けました。まさに時代かと思います。イギリスで産業革命が始まり、ダイヤモンドジュエリーを着ける人たちのすそ野が広がって約 250 年。ダイヤモンドジュエリーの近現代史において、アンカットダイヤモンドジュエリーは着ける側にとっても、デザインする側にとっても黎明期かと思います。アンカットダイヤモンドジュエリーの歴史をまさにいま作りだすのだというような、大胆で革新的なデザインに 期待したいです。
清水井 朋子 氏
例年以上に多くの応募作品の中に力作が多く、楽しみながら審査しました。
そのまま製品化できそうな完成度の高いデザイン画から、稚拙ではあるけれどアイデアが光るものまでがあり、審査員の皆さんと改めて「プレス奨励賞」として雑誌などのメディアで紹介したいと思う作品の基準を話し合う良い機会にもなりました。
このコンテストは「アンカットダイヤモンド」を素材とするところにテーマがありますので、研磨済でなく 「アンカット」のダイヤモンドを用いることの意味......
フォルムの面白さや原石に秘められたパワーなどを生かしたデザインを選ぶよう心がけています。
これまでのジュエリーにない新しさ、面白さと、身につけた時の美しさ、心地よさ、そして長く愛用し次の世代まで受け継ぐことのできる普遍性のあるアンカットダイヤモンドジュエリーが、これからも多数登場することを願っています。
渡辺 郁子 氏
過去最高の応募総数と海外からの応募者も増え、昨年以上にハードルの高い第 14 回目の審査会でした。何度もデザイン画とデザイン意図を確認し、実際に出来上がった状態をイメージして選ばせていただきました。プレス奨励賞は、雑誌やオンラインメディアで執筆し、多様なジュエリーを常にチェックしている審査員の集まりですので、トレンドに関しては敏感で、「どこかで見た作品」は真っ先に除外されてしまいます。「デザインコンテスト」である以上、新しい提案が必要だと思いますが、このコンテストは回数を重ねるほど独創的なデザインが増え、今回もお応募者の熱い想いを感じました。
本間 恵子 氏
コンセプトを形にしようという意気込みを感じさせる優良なデザインが増えた一方で、単なる思いつきや趣味の域を出ないアクセサリー的なデザインも多かった。高価なアンカットダイヤモンドにふさわしいジュエリーとして成立しているかどうかは、審査の段階で重要なチェックポイントとなる。また、ファッション誌などで取り上げてみたい現代性、話題性を備えていることも、プレス奨励賞という賞の性質上、重きを置いた。今回応募した方々、また次回応募してみたいと思う方々は、機会があればぜひ現物のアンカットダイヤモンドを見て、手に取ってみてほしい。研磨された宝石とは違う美しさや迫力を肌で感じ、デザインに生かしてほしい。
源川 暢子 氏
受賞の皆さま、おめでとうございます。今年は過去最高の応募数ということで、例年に増して見応えがあり候補を絞り込むのに苦労しました。アンカットダイヤモンドへの関心が高まっていることは、審査員としてとても嬉しかったです。作品は、パッと目に止まる素敵なものが多く、応募者の方もアンカットダイヤモンドの特性と、それぞれのテーマ石の個性とを熟考している印象がありました。一方で、回を重ねるごとに、デザインだけでなく身に着けた状態までを細密に考えた作品と、発想の段階で応募された作品との差が出やすくなっている気もしました。誰かが身につけたイメージ、実際に売り場に並んだシーン、そして受け継がれていくことなどをリアルに想像することで、より心の通ったデザインになるのでは、と思っています。来年も、素晴らしい作品に出会えることを楽しみにしております。