おかげさまで、第8回となるSUWAラフダイヤモンドジュエリーコンテストを今年も開催させて頂く運びとなり、国内を中心に117点ものご応募を頂きました。ご応募頂いた皆様、および、告知をして頂いた関係機関の皆様に、厚く御礼を申し上げます。
今年の募集アイテムは『メンズのコーディネートされた2アイテム』とさせて頂きました。例年と同様、一次審査で選出したデザイン3作品(計6点)を実際のジュエリーに仕立てて、出来上がった3作品で最終審査を行いました。出来上がった作品は、どれも良く出来ており、最終選考は意見が割れましたが、最終的に満場一致で、今年はラフダイヤモンドでなければ成り立たないデザインの2アイテムを最優秀賞として選出いたしました。
今年も山脇美術専門学院様のご協力を得て2017年7月14日(金)~7月19日(水)の4日間 (日祝は休館)、全応募作品を一堂に展示する機会を頂き、応募者の皆さんの思いが込められた個性ある力作と実際のジュエリーになった入賞作品を、一般およびプレスの方々に広くご紹介させて頂き、盛況のうちに終了したことをご報告いたします。初日にはシンポジウムと表彰式を行わせて頂きました。山脇美術専門学校様の多大なるご協力に、心より感謝申し上げます。
46億年前に地球が誕生してから20億年ほど経った頃、地下150-200キロの高温高圧の環境下でダイヤモンドは誕生しました。(600キロ説もあり。) そして、数億年~数千万年前の活発な火山活動によって地表近くに運ばれてきたのです。ちなみに、恐竜が闊歩していたので2億5千万年~6千5百万年前のことです。ダイヤモンドは気の遠くなるような地球時間を越えて現代に存在しています。
人類が初めてダイヤモンドに出会ったのは紀元前800年のインドでのことです。類まれな硬さ、美しい形と光沢は、人々にとって神秘的なものであったに違いありません。お守りとして珍重されたと記録が残っています。
地上で最も硬いダイヤモンドを研磨できるようになったのは、今から500年ほど前のことでした。とは言っても、その頃はまだほんの少し面をつける程度のものでしたが、当時の人々はダイヤモンドには特別なパワーがあり、それは自然のままでのみ保つことができると信じていたので、研磨せず、そのままで身に着けたのです。現在のブリリアントカットが研磨されるようになったのは18世紀初頭からで、ダイヤモンドの歴史からみると、つい最近のことです。
地中から見つけられたダイヤモンドの半分以上は、透明度が低く、宝石としては使えません。宝石に使えるダイヤモンドもそのほとんどは表面が曇っていて、研磨しなければ輝きません。ただ、その中で、ごくごく僅か、自然のままで美しい肌合いと艶のあるものが存在します。それは1つ1つ個性に溢れ、2つとして同じものはありません。古代の人達にとっては、それが『ダイヤモンド』だったのです。現代のブリリアントカットとは全く異なる悠久の時を超えた大自然の美しさがラフダイヤモンドの魅力です。
研磨したダイヤモンドの強い輝きに比べると控えめではありますが、1つ1つが異なる個性と力強さを放つ『自然のままのダイヤモンド』が永く身に着けられるスタイルに仕立てられることを期待して、このコンテストを開催しております。
ダイヤモンドは「硬く」「小さく」「時空を超えた」存在です。このラフダイヤモンドジュエリーコンテストを通して、ダイヤモンドの永遠の価値と魅力を感じて頂ければ幸いです。
平成29年7月吉日
諏訪貿易株式会社
取締役社長 横川道男
作品展の初日にシンポジウムと表彰式を行いました。入賞者3名、審査員2名、作品を製作した職人1名をパネリストに迎え、それぞれの立場からお話を頂きました。今年はプレス奨励賞の審査をして頂いたジュエリージャーナリストにもご参加頂きました。
まず、入賞者3名から、デザインするにあたり、一番こだわった点を伺いました。コンセプトを大事にしていて、まずそこを固めてデザインに落とし込んでいくというお話がありました。審査員からは、審査で一番重要視した点、製作職人からは、デザイン画から作品にしていく過程をスライドで解説頂き、デザイン画から実際のジュエリーのする際の工夫した点やこだわった点を説明して頂きました。
そして、ジュエリージャーナリストからは、プレス目線で将来性を感じる、メディアに取り上げてみたいデザインの審査について重視した点について、お話を頂きました。それぞれ立場の異なる4者からのお話はとても興味深く、参加者のみなさんにとって、とても有意義な時間だったようです。主催する私達も、とても興味深く拝聴させて頂きました。
今年の募集アイテムは『メンズのコーディネートされた2アイテム』でした。リング、ペンダント、イヤリング、カフス、ブレスレット、ピンなどの中から一緒に身に着けられるメンズアイテム2つのデザインを募集いたしました。今年は、テーマ設定が難しいというご意見も頂きました。今後も継続するにあたり、皆様から意欲的なデザイン画を応募して頂けるよう、テーマ設定を練って参ります。
今年も応募期間中に原石下見会を開催しました。下見会には遠方からご参加の方もいらっしゃいました。とても有難く思います。毎年、テーマのラフダイヤモンドの動画をサイトに載せておりますが、1つ1つ形の異なるラフダイヤモンドは形の把握が難しく、表現の難しさがあったかと思います。
どの応募作品も皆さんの努力が伝わる力作ばかりで、審査員5名、大いに悩み、議論を交わし、選考を行いました。今年は佳作も含めた入選15名中で、学生10 名、デザイナー1名、社会人3名、主婦1名でした。皆さんの今後の活躍を応援したいと思います。
また、昨年同様、佳作の中から意欲的なデザインを表彰する『チャレンジデザイン賞』を1点選出しました。
そして、今年は更に『プレス奨励賞』を設けて、1点選出しました。ジュエリー業界のプレス関係者に、将来性を感じる、媒体に取上げてみたいデザインを基準に選定して頂きました。通常の審査とは違った切り口で意欲的な作品が選出されましたことを報告いたします。
露木 宏 氏 (日本宝飾クラフト学院 理事長)
今回は、メンズのコーディネートされたアイテム2つということで、なかなか難しいお題だった思う。ただ、ラフダイヤモンドとメンズジュエリーはとても相性が良いと思う。今回は、既成のメンズジュエリーを意識した応募が多かったように思う。もっと自由な発想のアイテムの提案があっても良かった。
菅原 晴子 氏 (日本ジュエリーデザイナー協会正会員)
今回もとても楽しく審査させて頂いたが、オリジナリティの項目に悩んだ。デザインのオリジナリティだけでなく、使い方にもオリジナリティが感じられるものも評価するよう意識した。今回、審査をしてみて、男性からみたメンズジュエリーと、女性から見たメンズジュエリーが異なるのが面白かった。男性向けジュエリーにはいろんな好みがあると思うが、個人的には、ボリュームがあるものよりは、シャープなもの、機械的なもの幾何学的なものに魅力を感じた。
大前 英史 氏 (エディトリアルデザイナー、大前デザイン室代表)
今回は、いつにも増して難しかった。他で見たことがあるモチーフが多かったので、オリジナリティについて、どう解釈して良いか悩んだ。それと、若い人の応募が多い割には、古いデザイン・モチーフが多いように感じた。応募者の感覚よりも、実際に今、巷に出回っているメンズジュエリーの方が進んでいるように感じた。主催者の課題の出し方にも工夫が必要と感じる。今回は、女性審査員と男性審査員の見方が分かれたのは面白かった。
長嶋 泰子 氏 (デザイナー・第3回(2012)当コンテスト最優秀賞受賞)
応募者のコンセプト・テーマがメンズならではものが多かったので、とても面白く拝見させて頂いた。女性には新しいモチーフでも、男性にとっては当たり前のモチーフがあったり、女性が男性に身に着けてもらいたいものと、男性が自分で身に着けたいものに違いがあることも非常に面白かった。
吉岡 千加子 氏 (マーケティングプランナー、YSプランニング代表)
今回、特に感じたのは、製作に至らなくても、商品化につながるような良いデザイン、可能性を感じるデザインがあった。メンズというテーマだったが、以外に自然のモチーフ、和のモチーフが多く、女性向けのジュエリーとは違っていて、とても新鮮だった。
一次審査は、2017年5月25日(木)、諏訪貿易(株) 2Fサロンにおいて、個人情報を全て伏せて厳正に行なわれました。最初に、各審査員が全作品のデザインと意図を確認しながら、それぞれの感性で、117点より34点を選出しました。
なお、製作指示書の内容評価については、一部の審査員から製作指示に関する評価が難しいとの意見がありましたので、事前に弊社内で拝見させて頂きました。審査になるべく影響しないよう、製作に関して非現実的なもののみ、審査員に伝えさせて頂きました。
その後、その34点について、ラフダイヤモンドの魅力が活かされているか(5段階評価)、日常身に着けて長く楽しめるか(3段階評価)、オリジナリティ(3段階評価)、の3項目で採点され、上位14点が入賞作品として選考されました。
更に、実際に製作した場合の仕上がり具合、着用性などを含め、協議によって、14点から入賞3作品が選考されました。この時点で残りの11点の佳作が決定し、2017年6月1日(木)にサイト上にて一次審査結果発表後、入賞作品3点の製作に入りました。今年は、1作品につき2アイテム、合計6本作るため、それぞれ、横山達三氏、松川覚氏、川島昇氏に製作を依頼しました。
7月初旬に、入賞3作品が完成し、2017年7月7日(金)に最終審査を行い、最優秀賞を決定しました。短い期間で作品を製作して頂いた、横山達三氏、松川覚氏、川島昇氏に感謝を申し上げます。
今年は、実行委員会からの発案で、プレス関係者に応募作品を見て頂き、通常の審査とは別の目線で評価の高い作品を選出し表彰しようという話になりました。 6月21日(水)に以下のジュエリー業界のプレス関係者にお集まり頂き、応募作品を見て頂きました。
基準
ジュエリーのプレス目線・女性目線で、将来性を感じるもの、メディアで取り上げてみたいもの。
選定委員
本間 恵子 氏(ジュエリージャーナリスト)
清水井 朋子 氏(ジュエリージャーナリスト)
渡辺 郁子 氏(Brand Jewelry編集長)
源川 暢子 氏(ライター・エディター)
宮坂 敦子 氏(ライター・エディター)
プレス関係者の講評
今回、お招き頂き、楽しく選定をさせて頂いた。媒体で紹介したいものという目線を意識して選定した。デザインの見た目が良くても、与えられたテーマが咀嚼できていないものよりも、完成度はやや微妙でもテーマに沿ってコンセプトを練り込んだものを評価するよう意識した。ただ、男性のファッションをよく知らずにデザインしている人や、自分が作りたいものにラフダイヤモンドを合わせたデザインが、多かったように感じた。まず、男性とジュエリーとテーマはなかなかハードルが高いが、ラフダイヤモンドの魅力を引き出すにはどのような形が相応しいのかという視点でデザインを考えて欲しい。
源 梨江さん 東京都 / タイトル 『 YOROÏ 』
鎧とソーヤブル原石を融合させ、和のテイストを上手くデザインに落とし込んだ点を高評価した。職人、松川氏が丁寧に上手く仕上げてくれて、和を感じさせるが、モダンなジュエリーに仕上がった。当初の指示は鏡面仕上げだったが、原石が目立たなくなってしまう可能性が高かったため、事前に確認を取り、艶消しにさせて頂いた。プレス奨励賞の審査でも高評価だった。
森田 礼弥さん 東京都 / タイトル『 受け継がれる光 』
2020年開催の東京オリンピックを意識したデザインとコンテストテーマを上手く取り入れた点を高評価した。原石を聖火の炎に見立てて、メダルをカフスのモチーフにして中心に原石を据え、使い勝手の良さそうなジュエリーになった。当初の指示は鏡面仕上げだったが、原石が目立たなくなってしまう可能性が高かったため、事前に確認を取り、艶消しにさせて頂いた。職人、川島氏が艶消しの具合を何パターンか試行錯誤して頂き、とても上手く仕上げてくれた。
鈴木 喜美さん 神奈川県 / タイトル『 No Music No Life 』
ヘッドフォンをモチーフにして、マクル(三角形)の原石を上手くデザインに落とし込んだユニークな視点を高評価した。音楽関係の方に身に着けて頂きたい。製作指示には、ダイヤモンドがくるくる回るとあったが、厚みと重さが出てしまうので、なしにさせて頂いた。職人、横山氏が上手く仕上げてくれた。製作指示は鏡面仕上げだったが、最後まで、艶消しにするか悩んだが、最終的に製作指示通りの鏡面仕上げにした。
『 不完全な均衡 (imperfect balance) 』
坂井 久実さん 愛知県
※ 応募デザイン、および、作品の諸権利について
応募デザインの諸権利は応募者に帰属するものとします。ただし、応募者は、このコンテストに関する広報活動のためのホームページ・新聞・雑誌などへの掲載に関する権利、最終審査に選ばれ製作された作品に関する権利は諏訪貿易(株)にある事を許諾するものとします。製作された作品を商品化する場合には応募者と協議の上、行うものとします。
ラフダイヤモンドの美しさが引き出され、いつも身に着けられて、世代を超えて受け継がれてゆく『メンズのコーディネートされた2アイテム』のデザインを募集します。アイテムは絞りませんが、マッチングして身に着けられるアイテムを2つデザインしてください。未発表のデザインに限ります。
例:リング、ペンダント、ブレスレット、カフス、ネクタイピンなどから一緒に身に着けられるアイテムを2つ。
誰に、いつ、どういうシチュエーションで身に着けてもらいたいかを明記してください。
ラフダイヤモンドは、以下の3種(a, b, c)のいずれかを使用してください。写真に表示されたラフダイヤモンドのサイズを考慮して『コーディネート2アイテム』のデザインをお考え下さい。原石は動画で全体像をご覧頂けます。ちなみに、それぞれ3個ずつテーマ石を用意してますが、2個以上を使って、2アイテムのデザインをお考えください。カフスなどを想定して各3石をご用意しました。
・ラフダイヤモンド以外の宝石素材の使用は自由です。
・使用貴金属は、プラチナ、イエローゴールド、ピンクゴールドとします。
A. ソーヤブル注1 3石
右 : 1.31ct (イエロー / アンゴラ産)
5.9 x 5.6 x 3.8 mm (扁平)
中 : 0.80ct (ホワイト / アンゴラ産)
5.6 x 5.5 x 5.4 mm (対角線)
左 : 0.81ct (淡いグリーン / アンゴラ産)
5.5 x 5.5 x 5.5 mm (対角線)
B. メイカブル注2 3石
右 : 1.05ct (透明 / アンゴラ産)
7.5 x 5.8 x 2.8 mm
中 : 0.78ct (グリーン / ロシア産)
5.8 x 5.0 x 2.4 mm
左 : 0.68ct (グリーン / ロシア産)
5.4 x 4.6 x 2.6 mm
C. マクル注3 3石
右 : 0.88ct (グリーン / ロシア産)
6.3 x 5.5 x 2.5 mm
中 : 0.90ct (グリーン / ロシア産)
6.0 x 5.7 x 2.7 mm
左 : 1.33ct (透明 / ロシア産)
6.9 x 6.5 x 3.1 mm
注1 ソーヤブル (Sawable) : 2つのピラミッドを合わせたような正八面体に代表されるダイヤモンドの原石です。この原石は比較的素直に結晶し、透明度が高いのが特徴です。宝石用原石の10~15%しかなく、効率よく研磨できる大変貴重なものです。
注2 メイカブル (Makeable) : 形は様々で、透明度の高いものから中級品質のものまであり、それぞれの形に合わせて研磨されます。原石の形が悪くても良質に仕上がるものがある一方、美しさに欠けるものが生まれることもあります。
注3 マクル (Maccle) : 三角形のダイヤモンド原石をマクルと呼びます。マクルは2つの結晶が成長過程で接合して出来た双晶で、側面にV字のヘリンボーン(杉綾模様)が見えます。
※ サイズ表記 : 長さ x 幅 x 厚み (正八面体のソーヤブルは対角線で計測)
・ラフダイヤモンドの美しさが活かされているか
(To bring out the beauty of rough diamonds)
・独創性(Originality)
・着用性(Wearability)
・次の世代に受け継がれてゆく普遍性
(Universal design that will go beyond generations)
・製作指示の内容(Direction for manufacturing)
・個人に関する情報は全て伏せて審査を行います。